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ラボニュース 2020

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2020年12月25日(金)

オーパス・コンサルティング株式会社の人と打ち合わせ
オーパス・コンサルティング株式会社は、国の支援を受けて、医療分野においてUAE(アラブ首長国連邦)やカタールと日本との技術的/人的な交流を推進している。北海道大学や大阪大学などは、すでに先方の学生を受け入れたり技術導出を行ったりという交流を行っている。今回、交流のための講演会で話をさせてもらう方向で、打ち合わせをした。UAEといえば、2014年頃にあった「京都大学アブダビキャンパス構想」という話で私はワーキンググループの一員として「再生医療研究センター」の構想を担当したことがあり、個人的には親近感がある。あれやこれやの話が出て、楽しかった。写真はオーパス・コンサルティングの内田敦子さんと、北海道大学の国際医療部副部長のピーター・シェーン先生。ピーターさんはルカ・サイエンス株式会社(2019年9月19日の記事参照)の科学顧問もされている。

2020年12月23日(水)

紅萠(くれないもゆる)の取材
「紅萠」は、京都大学の広報誌。その中の「研究室でねほりはほり」というコーナーで取り上げて頂くことになり、この日、取材を受けた。写真は京大広報課の折舘佳歩さん(向かって左)と京都通信社の河田結実さん。紅萠は、いろいろな切り口の記事があって、とても面白い。
紅萠HP
          

2020年12月22日(火)

伊吹山
やや早めに藤田医大から帰京。新幹線からの伊吹山の写真で、冬型の気象のため雪で覆われていた。標高1337mで、京滋では最高峰。独立峰であるが、火山ではなく、石灰岩質の山。佇まいが素晴らしい。

2020年12月21日(火)ー22日(水)

藤田医科大学出勤
藤田医科大学の4号館の6階に居室と実験室を頂けることになった。写真中央の建物が4号館で、6階はこの建物の最上階。上から見ると六角形をしている。この大学にはこうした六角形の建物がいくつかある。創始者の藤田啓介総長のデザインらしく、ベンゼン環を模したものだそうだ。
居室として使う予定の部屋に、とりあえず机と打ち合わせ用のテーブルを置いていただいた。
窓からの景色。対面の建物は大講堂。
この2日で、事務や、三原先生、三浦先生と打ち合わせをした。事務方の人達と大学院の研究科に関する打ち合わせを行った時に、ちょっとした冗談で先日のTBSの「報道特集」の取材の折に頂いた半沢直樹の名刺を出したら、結構うけて、写真を撮っていただけた。
          

2020年12月18日(金)

ラボの大掃除
年末の風物詩である大掃除。忘年会も無いまま、1年が寂しく終わる。

2020年12月17日(木)

黄ぶなグッズ
獨協医科大学の徳田信子先生(解剖学教授)が「黄ぶな」グッズを送って下さった。マスク(30枚)とマスクホルダーのセット。疫病退散キャラといえばアマビエが有名だが、黄ぶなも有名になりつつあるようで、ネットで検索すると色々なグッズがあるようだ。宇都宮のローカルキャラで、「昔天然痘が流行した時に、宇都宮市の中心部を流れる田川という川で黄色のフナが釣れ、病人が食べて治癒した」という伝説があるそうだ。
マスクシールも付いていた。マスクのすみに貼るということらしい。宇都宮といえば餃子は全国的に有名であるが、カクテルやジャズでも有名だとのことだ(2018年6月25日の記事参照)。黄色い電車は現在計画中の路面電車のようだ。

2020年12月17日(木)

京都も雪
この2日くらい前から寒気が流れ込んできて、日本海側は大雪。今朝、京都でもうっすらと積雪があった。教授室の窓から見えるカエデは、今年も紅葉が遅く、ようやく今週に入ってからしっかりと紅葉した。紅葉したカエデと雪という組み合わせはなかなか良い。
しばらくすると雪が降り出した。窓際のランは先月末に咲き出した(2020年11月29日の記事参照)が、まだ咲いている。ランは一般に花の寿命が長い。日本海側の降雪は、明日は一旦おさまるが、週末にまた大雪になるという。先シーズンの雪不足(2020年1月23日の記事参照)とはえらい違いだ。
          

2020年12月15日(火)ー16日(水)

Eradicate Cancer 2020に参加
表記の会がメルボルンで、on line形式で開催された。この会は2年前の3月に第一回が開催された。振り返ってみると、色々な人と会って、また美味しいものを沢山食べて、楽しそうだ(2018年3月15日-17日の記事参照)。元の世界に戻って欲しい。今回もまずは3月に開催が予定されていたが12月に延期された。会は8時に始まったが、日本でいえば朝6時。これでもアメリカやヨーロッパで開催される会よりはマシではある。7時ごろ、教授室の窓からきれいな朝焼けが見られた。
ちなみに、オーストラリア自体は、季節でいえば今が夏であるとはいえ、この2-3ヶ月は新型コロナをうまく制御している。オーストラリアでは、生活様式などは欧米とほぼ同じであろうから、こういうデータをみると、ファクターXとかマスクの習慣とかではなく、「初動が全て」という事がわかる。
会はIrv Weissman (Stanford University)によるキーノートレクチャーで始まった。タイトルは「Normal and Neoplastic Stem Cells.」 。後半はCD47の話だった。CD47はDon’t eat meシグナルで、これをブロックする抗体を併用すると、白血病やMDSで化学療法の治療成績が向上するという。まだPhase I臨床試験しかなされていないが、ギリアド・サイエンシズはこの抗体を作っているForty Sevenという会社を今年の3月に5000億円くらいで買収している。実際に効くということなのであろう。写真はレクチャーの後のディスカッションの様子。
その後、2019年のラスカー賞を受賞したジャック・ミラーを祝するセッションがあり、ピーター・ドハティーがミラーについて語った。
ジャック・ミラーは胸腺が免疫に関わる臓器であることと、リンパ球の中に抗体を作るB細胞とそれを助けるT細胞があるということを見つけた(1968年)人で、2018年には日本国際賞を受賞している(2018年4月19日の記事参照)。ちなみにドハティーはキラーT細胞の抗原認識にMHC拘束性があることを示した(1974年)人で、1996年にティンカーナーゲルと共にその功績でノーベル賞を受賞している。なお、ミラーは89歳、ドハティーは80歳、前項のワイスマンは81歳。座長はリチャード・ボイド。
私は2日目に登壇。左はそのセッションのプラグラム。
うまくつながらないおそれがあったので、プレゼンにはあらかじめ録画したものを使った。
プレゼンの最後に、国際KTCC延期のアナウンスをさせてもらった。少し前にもラボニュース欄で登場したスライドであるが、再登場。
最後の最後にこのスライドを出した。こういう風景は、すでに隔世の感がある。
後半のセッションのスピーカーと座長で、ディスカッションと質疑応答。よくオーガナイズされた、いい会だった。

2020年12月8日(火)

第49回免疫学会学術集会
この日、表記の会が完全on lineの形式で開催された。午前、午後とも新型コロナについてのシンポジウムで、お昼に各種の賞の授賞式があった。バーチャル授賞式で、清野先生が名前や受賞理由を読み上げた後、画面の右に賞状を差し出し、受賞者は向かって左を向いて受け取ったような動きをする。今年の免疫学会賞は竹内理先生(京大)と長谷耕二先生(慶應大)。写真は研究奨励賞を三上統久先生(レグセル株式会社)が賞状をバーチャルに受け取っているところ。
プログラム:
最後に、「Factor X(日本人の死亡率が欧米に比べて低い原因)は何か」と言う70分間の座談会があった。司会は反町典子先生(国際医療研究センター)。宮坂昌之先生(大阪大学)の聴きごたえのあるレビューに続いて、討論。パネリストは、左上から宮坂先生、反町先生、金井隆典先生(慶應大)、石井健先生(東大)、高橋宜聖先生(国立感染研)、今井由美子先生(医薬基盤研)。反町先生の司会が素晴らしかった。「Factor Xはまだよくわからないが、遺伝的背景はそれほど大きくないかも」「バイオバンクなどの研究体制をあらかじめ整えておくことが大事」「ワクチンの大事さを理解できるリテラシーを子供の頃から身につけておくべき」「国はワクチンの開発費をもっと出すべきだった」などの議論が出て、面白かった。

2020年12月4日(金)

藤田医科大学初出勤
12月から、クロスアポイントメントで藤田医科大学の教授としても勤務することになった。新型コロナ治療法の開発研究を進めるためだ(2020年9月29日の記事参照2020年10月14日の記事参照)。この日は、朝から初出勤。斉藤邦明先生(学長補佐)、星長清隆先生(理事長)、才藤栄一先生(学長)、高橋雅英先生(国際再生医療センターセンター長)、三原圭一朗先生(同センター教授)と面談した。
事務で、直径1.5cmくらいのピンバッジを頂いた。
恥ずかしながらピンバッジの留め具の使い方を知らなかったのであるが、宮武さんが教えてくれた。留め具の頂部を指で挟んでちょっと持ち上げると、すっと外せるという仕組みだった。

2020年12月2日(水)

リバーセル定例ミーティング
リバーセルでは、2週間に1回、スタッフ(現在非常勤を含めて約8人)とon lineで1時間くらいmeetingを行なっている。この日は午前中に御車の事務所でmeetingがあり、午後ももう少し用務があったので、近くで昼食。このところ「貧乏学生はタダ」で有名だった王将によく行っていた(2020年10月1日記事参照)が、10月一杯で閉店になってしまったので、この日はその近くの燕燕(えんえん)という中華料理屋さんへ初めて行った。写真は鶏肉の味噌炒め定食で、890円だった(と思う)。美味しかった。
リバーセルの事務室のあるクリエーションコア御車の建物は、鴨川側にテラスがあって、景色がいい。3階のテラスからの眺め。

2020年11月29日(日)

洋ランの花
教授室の窓際に置いている洋ランは、水をやっているだけで特に世話はしてないが、毎年よく咲いてくれる。居室なので湿度を高く保てないから、湿度が必要なランは、すぐにダメになる。残っているのは、この環境に耐えられる種という事だが、半分くらいの種は生き残っている感じだ。ちょうど3種類がいい感じに咲いているので、撮影した。
オンシジュームの1種。オンシジュームは黄色の花が多いが、これはエビネランに似ているので気に入っている。
リカステの1種。品種名はアロマティカで、名前の通り、ちょっとシナモンに似た、いい香りがする。
ジゴニシアの1種。品種名は紫小町。きれいな色だ。

2020年11月27日(金)

第47回医科研創立記念シンポジウム
表記の会がon lineで開催された。テーマは「Neo-Immunology on infection, allergy and cancer(感染症、アレルギー及び癌に関するネオ免疫学)」。写真は中西真先生(向かって左)と北村年雄先生。日本全体に第3波が来ていることもあり、普通に講演会が現地開催できるようになるのはまだまだ先になりそうだ。
昨年の10月-12月のラボニュース欄を見ると、この時期は色々な学会に参加している。そういう日常から1年近くが経とうとしていて、そのころの写真をみると、すでに遠い昔の、違う世界のように見える。
私は2番目の演者。録画形式ではなくLiveで発表した。
最後に、数枚のスライドを使ってNegative Selectionの活動を紹介した。ガッテンに出場した事も紹介(2018年10月31日の記事参照)。
セカンドアルバムの告知。前にも出した写真だが、この日は英語のセッションだったので、題材にした細胞名を英語で表記した。曲の録音はできているのに、コロナ禍のせいでミュージックビデオの制作が思うように進まない。CDをリリースするのはミュージックビデオができてからと考えているので、まだ少し先になりそうだ。

2020年11月21日(土)

TBS「報道特集」で研究が紹介された
我々が進めている新型コロナ治療法開発研究が、TBS系の報道番組「報道特集」で紹介された。放送時間は17時30分から18時50分まで。番組では、一般的なニュースの後、30分くらいの特集番組が2本放映され、その1本目が新型コロナの現況のレポートで、その中に登場。まず北海道での感染拡大の話、オリンピックの準備の話に次いで、ワクチンの話。最近、ファイザーやモデルナのワクチンが95%の効果があると報告された。ワクチンについて石井先生は、「安全性の検証を慎重にするべき」と語った。
「副作用があることが、例えば数万人に打った段階で分かるのと、数千万人に打った後で分かるのとで、意味が違う。」というような話をされていた。
そのような文脈の中で、我々の研究が紹介された。わかりやすい流れで紹介されていたので、全文を掲載する。
ナレーション「画期的な治療薬の研究も進められている。」
YouTube:重症者を救え 新型コロナの画期的な治療薬とは【報道特集】
ナレーション「キラーT細胞はがん細胞を見つけるとくっついて細胞に穴をあける。そこから毒物を入れがん細胞を次々と破壊していく。キラーT細胞は人が誰でも持つリンパ球の一つだ 。」
J Exp Med (2015) 212 (3): 307–317
ナレーション「このキラーT細胞を使い新型コロナウイルスの治療薬の開発に挑んでいる研究者がいる。京都大学の河本宏教授だ。」
ナレーション「世界でもこの研究所でしかできない方法を確立させたことで、キラーT細胞を使った治療薬の開発に道を開いた。」
小嶋修一氏「今日は。今日はよろしくお願いします。」
河本「よろしくお願いします。」
(河本、白衣を着て実験室に入る)
ナレーション「現在は『抗体』利用の治療薬開発が主。」
ナレーション「抗体はウイルスに感染した時に作られウイルスを攻撃するものだがウイルスが細胞内に入り込むと抗体は効かなくなる。」
ナレーション「だがキラーT細胞ならウイルスに感染した細胞ごと破壊することができる。」
河本「ウイルスを撃退するには、感染している最中に細胞を攻撃するのが効果的なんです。」
「キラーT細胞はそのために存在すると言っていいくらいウイルス感染細胞を殺すのが得意です。」
ナレーション「治療法開発の戦略はまず、新型コロナから回復した患者の血液を採取。この血液中には新型コロナウイルスを見つけて撃退する能力の優れたキラーT細胞が存在する。その遺伝子をiPS細胞に導入し再生する。」
ナレーション「iPS細胞のどんな細胞・組織・臓器にもなることができる特性を活かすことでキラーT細胞の量産が可能になる。」
(河本研のカンファレンス)
ナレーション「しかし、教授は他人のキラーT細胞を薬として入れるのは簡単ではないという。」
河本「キラーT細胞を薬として使いたいと思う研究者は世界中に沢山います。」
河本「しかし、他の人のキラーT細胞を、薬として他の患者に入れるのは、そう簡単ではないんです。」
ナレーション「他人のキラーT細胞は『異物』とみなされ『拒絶反応』が起こるためだ。ところが教授の研究チームには拒絶反応を乗り越える世界唯一の技術があるという。」
河本「iPS細胞からT細胞を作ると、この問題が解決できます。」
河本「iPS細胞から質の良いキラーT細胞を作る技術を持っているのは今のところ世界で我々だけです。」
ナレーション「この独自の技術は、拒絶反応が起こりにくいiPS細胞を材料にキラーT細胞を再生するものだ。」
(注:写真は渡邊武先生です。)
ナレーション「(遺伝子を導入したiPS細胞からキラーT細胞を再生する技術は)すでに欧州で国際特許の取得など世界的に高く評価されている。」
ナレーション「最大の狙いは重症化を食い止めること。」
ナレーション「病院の冷凍庫に保管が可能なため患者が重症化した場合、すぐ点滴治療にも入れる。」
河本「肺炎をそれ以上に重症化しないように止める力がキラーT細胞にはあるはずです。」
「そのタイミングを逃さず治療したら死亡する人の数を大幅に減らせます。」
「死亡例が減ったら、怖い病気でなくなります。」
ナレーション「教授は藤田医科大学との共同研究を初めていて、」
ナレーション「現時点で新型コロナから回復した6人の血液を採取しさらなる開発を進めている。」

2020年11月17日(火)

TBS「報道特集」の取材
TBS系(関西では4チャンネル)で毎週土曜日17時30分から放映されている「報道特集」という老舗の報道番組があるが、新型コロナの現状についての特集のコーナーで、我々の再生キラーT細胞による治療法の開発研究が紹介されることになり、この日の午後、取材を受けた。収録終了後、記念写真。写真は左から、リバーセルの広報を担当してくれている大久保博志さん(Progress)、新型コロナ特集の制作担当者である小嶋修一さん、私、堀浩治さん(報道局映像取材部、カメラ担当)、小野山寛之さん(ニュース映像部、音声担当)。放送は11月21日土曜日の予定。なお取材中はずっとマスクをしていたが、写真を取るとき、一時的に外した。
この日、京都の新規感染者は過去最多であった。京都にも第3波がきたようだ。

2020年11月11日(水)

新型コロナ第3波
新型コロナは、第3波がきているようだ。全国レベルではっきりとした波形が見られる。東京、愛知、大阪など大都市でも全国レベルと似た大きさのはっきりとした波が見られるが、北海道には特別大きな波が来ている
新型コロナ関連の話として、近々、ヘルスビジネスマガジン社主催・サーモフィッシャー共催のWeb配信の新型コロナ関連シンポジウムで講演をすることになったので、紹介しておく。内容はAMEDの新型コロナ創薬事業でやっている研究の紹介であるが、前半はウイルスに対する免疫応答の解説で、免疫学入門のような話になる予定。また、本欄によく書いているが、獲得免疫系が味方になるとは限らないという話もする(2020年10月29日の記事参照)。その他に、最近始めた藤田医科大学との共同研究にも言及する(2020年10月14日の記事参照)。

2020年11月9日(月)

京都府の「住民に愛されている街(駅)ランキング」で「神宮丸太町」がトップ
リクルート住まいカンパニーがまとめた「SUUMO住んでいる街実態調査2020関西版」によると、京都府の「住民に愛されている街(駅)ランキング」では、京阪「神宮丸太町」がトップとのこと。どういう基準で選ばれているのか分からないが、何であれ研究室のすぐ近くの駅(入り口まで徒歩1分)が好かれているというのは、嬉しいことだ。
神宮丸太町は何と関西全体でも5位に入っている。
神宮丸太町の駅は、三条京阪まで一駅だし、散歩で行ける範囲に疎水、御所、平安神宮などもあって、確かにいい駅ではある。左の写真は本年10月31日に、丸太町の橋を渡って鴨川の西側の岸から撮ったもの。鴨川に近いのも高ポイントだ。このあたりだけでなく、鴨川沿いはどこでもきれいだし、自然も豊かだ(2020年10月4日の記事2019年4月5日の記事参照)。100万人以上の人口を抱える街中にこのレベルの清流が流れているのは世界的に見ても稀有なことだと聞いたことがある。
        

2020年11月3日(火)ー4日(水)

ThymUS 2020 Virtual Meeting開催
表記の会が Web meetingの形で開催された。元々は5月の連休頃にハワイのマウイ島で開催される予定であったのが、一旦9月にマウイ島という形で延期になり、ついにその現地開催も諦められて今回の形になった。東部標準時で3日の午前中と4日の午後に、若手の発表を中心にした会として開催された。参加費は無料、登録者は400人くらい、実際に参加していた人は200-300人くらいだった。参加者は原則視聴するだけで、質問があればQ&Aでという形式。
 日本でいうと1日目は11月3日の22時から4日の午前3時、2日目は4日午前2時から9時まで、という大変きびしいスケジュールだ。一部寝てしまって全部は聴けなかったが、胸腺やT細胞の話が聴け、司会や座長にはよく知っている面々も現れて、楽しかった。
 オーガナイザーの「Nancy, Dave, Marcel & JC」は、Nancy Manley (University of Georgia)、David Wiest (Fox Chase Cancer Center)、Marcel van den Brink (Sloan Kettering Institute)、Juan Carlos Zúñiga-Pflücker (University of Toronto)。
2日目は早朝から教授室にきて聴講。若手の発表の後に、Jonathan Sprent(Garvan Institute of Medical Research, Sydney)によるキーノートレクチャーがあり、その後プレゼンテーション賞の発表の前に3分ほど時間をもらって、国際KTCCの延期について、日本時間で朝8時30分頃に、スライドを使いつつアナウンスした。2021年3月に予定していた会を同年10月4日(月)-8日(金)に延期。オリンピックの後になるので、オリンピックに外国の人たちが待機なく入って来れるようになっているかどうかが鍵、というような話をした。
2枚目のスライドで、「昼間の学術集会だけでなく、夜のパーティーもこれまで通りできたらと願います」というような話をした。
3枚目のスライド。早く元の世界に戻ってほしい。

2020年10月29日(木)

免疫学会ニュースレター
本日、免疫学会のニュースレターが届いた。今回は、新型コロナ特集が組まれており、その中の1つの記事を書いた。タイトルは「新型コロナ:獲得免疫は味方か敵か」。いつもの持論を書いた。「新型コロナは自然免疫だけで対処できる弱いウイルス」「なまじ獲得免疫が働くから発症したり重症化したりする」「抗体やヘルパーT細胞は時に悪い方向働く」「一方キラーT細胞は頼りになる」という話。
記事「新型コロナ:獲得免疫は味方か敵か」

2020年10月23日(金)

実験医学増刊号「細胞医薬」発刊
JSTの研究開発推進センター(CRDS)の辻真博先生と共同で編集した表記の増刊号が、本日、発刊となった。「細胞を薬のように使う時代がやってきた」というのが基本テーマ。再生医療や遺伝子治療の一部ではなく、独立した新規の戦略である、という視点も提起している。治療戦略の様式のことを最近よく「モダリティ」と言い、本増刊号でも「新規の創薬モダリティ」という副題になっている。本の中では「デザイナー細胞」という表現も出てくる。「細胞を好きにデザインする戦略」とも言えるので、デザイナー細胞というのはいい呼称だと思う。編者が言うと自画自賛になってしまうが、著者のラインアップが素晴らしい。実際に細胞医薬を作っている人の他、各種新規の技術、汎用化戦略、産業、規制など、いろいろな側面から論じる記事が載っており、読み応えがある。
序文
目次
アマゾンのサイト
辻先生のプロフィール。辻さんとは時々あれこれと話をしている(2019年11月7日の記事参照)。ライフサイエンスの将来の動向を考えるのを生業にされておられるだけあって、内外の業界の状況を深く広く把握されていて、高い先見性を持っておられる。今回の広範な著者のラインアップができたのは、基本的には辻先生のおかげである。

2020年10月18日(日)

プラナリアを再入手
2005年頃、神戸の理研を訪れた際に、プラナリアを阿形清和先生の研究室の人から頂いた。阿形先生はプラナリアの研究者で、「切っても切ってもプラナリア」という本も著しておられる。阿形研のプラナリアは、信州の清流で採取されたものとの事だった。以後、ずっと飼育を続けてきたが、今年の初夏あたりからあまりエサを食べなくなり、1ヶ月くらい前に途絶えてしまった。森川先生はかつて飼育されていたことがあり、最近再度飼育したいと言われたので、増田さんが東大の新田剛先生にお願いして送ってもらい、15日木曜日に到着した。新田先生のプラナリアは、かつてうちから分与したものだ。なお、森川先生には2013年に一度分与した(2013年11月22日の記事参照)が、翌年留学される際に、うちの里帰りになった(2014年7月25日の記事参照)。その際には、大きく育っているのに驚いた。新田先生も上手に大きく育ておられ(2018年8月5日の記事参照)、今回送ってもらったものも大きい。私も一部を分与してもらった(写真)。阿形研のプラナリアは、他には、東邦大学の田中ゆり子先生にも分与している(2014年8月10日の記事参照)。

2020年10月17日(土)

洛北阪急スクエアのペットショップ
高野にあるカナートが改築されて「洛北阪急スクエア」として再オープンしたのは2019年12月。今更であるが、この日の夕方、初めて行った。売り場面積が大幅に広くなっており、2階にとても大きなペットショップができていた。イヌ、ネコ、各種小動物から魚、昆虫まで、幅広く取り扱っていて、見ているだけで楽しい。
ミーアキャット。ネコではなくマングースの仲間らしい。アフリカに生息とのこと。立ちポーズがかわいい。値段は30万円台だった。

2020年10月14日(水)

リバーセルが藤田医科大学と共同研究契約を締結
この日、リバーセルは、藤田医科大学と新型コロナの治療法を共同で開発するという契約の締結を、プレスリリースした。
 少し前に書いたように、河本研は藤田医科大学と共に新型コロナウイルス治療法の開発を進めることにした(2020年9月29日の記事参照)。それに伴い、リバーセルと藤田医科大学が共同研究契約を結んだという話である。
プレスリリース:
藤田医大からのプレスリリース:
以下に、今回の共同研究について解説する。新型コロナウイルス感染症に対する免疫療法としては、ワクチン接種、抗体の投与、元患者血漿の投与などの方法の開発が、世界中で数多く進められているが、この共同研究で開発される他家のT細胞製剤は、これら既存の戦略とは異なる全く新しい戦略。すなわち、この治療法の開発に成功すれば、人類は新型コロナウイルス感染症に対して、新たな治療戦略を手にすることになる。知る限りでは、世界で唯一の試みである。
ウイルスは、細胞に侵入してその細胞内で増殖し、その後細胞外に出て他の細胞に感染するという方式で感染を広げていく。ウイルスに対して起こる主な免疫反応には、 B細胞が作る抗体によるものと、キラーT細胞によるものがある。抗体は、ウイルスが細胞外にいる時に、ウイルスに結合してウイルスを無力化する。一方、キラーT細胞は、ウイルスが感染した細胞を殺傷する事によって、ウイルスを殲滅する。ウイルス感染症が治るためには、抗体だけでは不十分で、キラーT細胞の働きも必要だとされている。
ここでキーとなるのが、T細胞レセプターという分子だ。キラーT細胞は、このレセプターを使って、ウイルス感染細胞を見つけ出す。
抗体や患者血漿は、新型コロナから回復した患者から採取して投与されたりする。キラーT細胞でどうしてそれができないのだろうか。それは、「拒絶されてしまう」からである。移植の基本であるが、白血球の血液型とも言えるHLA型をドナーとレシピエントで合わさない限り、すぐに拒絶される。もしもHLAをある程度合わせたとしても、多くの種類のT細胞が混じったまま(ポリクローナルという)を投与すると、レシピエントの体を攻撃する反応(移植片対宿主病:graft versus host disease: GVHD)が起こってしまう。
 我々の戦略では、「コロナウイルス特異的T細胞レセプター」をまず単離する。これを汎用性の高い他家移植用のiPS細胞に導入する。そこからキラーT細胞を再生する。すると他人に投与できるT細胞製剤を作ることができる。
ここでは、世界を見渡してもどうしてこのような戦略を取るグループがないのか、という点を解説する。現在、ある種のがんに対して自家T細胞を用いた治療法が行われている。例えばCAR-T細胞療法は、日本でもある種の白血病に対して承認されている。なぜそれが使えないのか。コロナ特異的T細胞レセプターがあるのなら使えば?と思われるかもしれない。しかし、その方法は、原理的には可能ではあるが、時間がかかりすぎるので、現実的ではない。自家T細胞療法は一般に2週間は待機する必要があるとされている。新型コロナの肺炎の進行の速さを考えると、間に合いそうにない。
 また、T細胞レセプターはともかく、CAR(キメラ抗原レセプター)と呼ばれる分子は、抗体分子を元にして作られているので、細胞内に潜むウイルスを見つけ出す事は困難だ。
 「では、他のグループも河本研と同じように他家T細胞を使えばいいのでは?」と思われるかもしれない。手前味噌になるが、ここが難しいのである。我々は、「T細胞の材料として使うiPS細胞の作り方」と、その「iPS細胞から高品質なT細胞を誘導する方法」という2つの点について、独自の技術を持っている。この2点については、欧州では特許を取得できている(前者PCT/JP2015/070623、後者PCT/JP2017/015358)。欧州で特許が成立したということは、先行発明や先行論文が存在しないことを示している。なお日本や米国などではまだ審査中。
ここでは安全性について論じよう。免疫はいつも良い方向に働いてくれるとは限らない。例えば抗体は時に増悪方向に働く事が知られている。抗体依存性感染増強という、抗体を介して貪食しようとするマクロファージに感染する現象である。一方、T細胞免疫は治す方向に働くと一般には理解されている。しかし、サイトカインストームには、ヘルパーT細胞とマクロファージの相互作用が関与している(図中段)はずなので、そういう意味では、味方とは限らないと言える。ワクチン開発で注意が必要な点である。
 少し前に論じた(2020年5月8日の記事参照)が、むしろ免疫を持っている方が重症化しやすいという可能性もあるのではと考えている。実は新型コロナは自然免疫だけで対処できる弱いウイルスなのでは?そして、歳を取るほど発症/重症化が増えるのは、獲得免疫がなまじ働くからでは?例えばデング熱は、2回目の感染時に重症になるという。はしかも成人が感染すると重症化するとされる。コロナの重症化にも「子供の喧嘩に親が出る」的な要素があるのかもしれない。未感染者で特異的ヘルパーT細胞が検出されたという報告があるが、この交叉反応性T細胞が常に味方かどうかは、前向きに経過をみる研究をしてみないとわからないであろう。肺炎が「突然」悪化するという経過からは、自己免疫疾患的な要素も疑われる。
 抗体やヘルパーが不穏な動きをしかねない一方で、キラーT細胞は頼りになると考えている。キラーT細胞は感染細胞を殺すので組織が損傷を受けるという懸念は出るかもしれない。しかし、感染細胞はどの道死ぬのだから、死ぬ運命の細胞を早めに殺すだけの事だ。無駄に組織を傷める事はなかろうと考えている。つまり、キラーT細胞を用いる治療法は、副作用が少ない可能性が高いと考えている。
藤田医科大学で進める戦略をまとめる。まず、日本人に多いHLA(HLA-A2402)にマッチするコロナ特異的T細胞レセプターを、肺炎から回復した患者の末梢血から同定する。これを汎用性の高い他家移植用のiPS細胞に導入する。そのiPS細胞からキラーT細胞を再生する。すると他人に投与できるT細胞製剤を作ることができる。現在入手できるiPS細胞では6人に1人にしか使えないが、数年後にはHLAを欠失させて誰にでも投与できるiPS細胞も作られる予定だ。これら一連の研究を京大と藤田医科大学で進め、リバーセルはこの研究を支援する。藤田医科大学側の代表者は輸血細胞治療科の三浦康生先生(2020年9月29日の記事参照)。2-3年以内に臨床試験を施行することを目指している。重症患者が対象になると考えられる。例えば肺炎を発症した患者で、予後因子(年齢、基礎疾患など)から見て死亡率が高いと推測されるような患者が対象になると考えている。点滴で投与する。

2020年10月9日(金)

山本正人先生来訪
山本正人先生はミネソタ大学外科の基礎・トランスレーショナル研究部の教授。膵臓がんを標的に、腫瘍溶解性ウイルスとしてアデノウイルスを用いた戦略の開発を進めておられる。膵臓がんは手強い相手であるが、いろいろな治療法を組み合わせれば戦えるかもしれないということで、少し前から共同研究を検討している。京都にご実家があり、所用があって帰って来られていたので、研究室に来ていただいた。話を聴かせていただいて、腫瘍溶解性ウイルスという戦略は免疫療法との相性が良い事をあらためて知り、また膵臓がんのような強敵に立ち向かうにはとてもパワフルなツールであることだと思った。
山本先生は北村先生の古くからの知り合いで、2017年遺伝子治療学会で日本に来られていた折に、8月6日の免疫ふしぎ未来展の打ち上げライブに来て頂いたことがあった。左は、その時の写真。向かって左から山本先生、石戸聡先生(兵庫医大、NSのベース/ギター)、秋葉久弥先生(2015年実行委員長、順天堂大学)、阿戸学先生(国立感染研、免疫ふしぎ未来展2016実行委員長)、北村先生(東大医科研、NSのドラムス)。
なお、打ち上げライブの様子は毎年ラボニュース欄に載せているが、ラボニュース欄は2015年10月から2017年9月までの約2年間、あまりの忙しさ(というか精神的なゆとりの無さ)のためにブランクがあって、2017年8月のライブについての記事がないので、話題が出たついでに、何枚か貼り付けておく。この年の集会長は石渡賢治先生(慈恵医大)。ライブではTOKIOの「宙船」を熱唱された。いい曲だ。
小安先生はスピッツの「チェリー」。茂呂さんがコーラスに加わった。
ライブでは最後に、Negative selectionが「夏の終わりに」と「リンパ節一人旅」を演奏。この約1年後に、「リンパ節一人旅」は「ガッテン!」に登場することになる(2018年10月31日の記事参照)。

2020年10月9日(金)

第24回日本がん免疫学会
札幌のホテルライフォート札幌でがん免疫学会が開催された。集会長は鳥越俊彦先生(札幌医科大学)。永野君がワークショップのオーラルでの発表に選んで頂けた。ハイブリッド形式だったので、永野君は直前まで現地に行くつもりであったが、所要のため断念し、リモート参加となった。演題名は「TCR遺伝子導入iPS細胞からCTLを再生するための新規の方法:TCRカセット法の開発」。座長は池田裕明先生(写真、長崎大学)と玉田耕治先生(山口大学)で、いいdiscussionをリードしていただけた。

2020年10月4日(日)

鴨川のニゴイ
夕方、ラボの近くの鴨川を散歩。
穏やかな流れだ。
よく見ると魚影が..。
河原に降りて撮影。少し前に書いた(2018年3月29日の記事参照)ように、鴨川にはニゴイと思われる魚がいる。コイの近縁種とのことだが、コイは外来種、ニゴイは在来種なので、大事にしたいものだ。この日は10数匹の群れが見られた。体調は40 cmくらいに見える。すぐ近くの川でこういう大きな魚の群れが見られるのは、ありがたいことだ。
ニゴイのアップ。なかなか格好いい。白身で美味しいらしいが、小骨が多いとのこと。
ナマズもみられた。
        

2020年10月1日(木)

リバーセルが大塚製薬とリサーチライセンス契約
この日、リバーセルから表記の件でプレスリリースを出した。大塚製薬は自家T細胞を用いた養子免疫療法の臨床試験をいくつか進めているが、他家T細胞を使う戦略ではリバーセルの特許技術を使うという方向で話が進んでおり、まずは開発研究でその特許を使うためのリサーチライセンス契約を結んだ。大手が我々の技術を使ってくれるのは、とてもありがたいことだ。
プレスリリース:
10月2日の京都新聞朝刊の経済欄(11面)に、この契約についての紹介記事が載った。要点がうまくまとめられている。

2020年10月1日(木)

出町の王将
出町の商店街から少し下がったところにある、「餃子の王将 出町店」。
「お金が無い時はタダ」とか「皿洗いでメシ代はタダ」などの制度があり、お金のない学生にやさしい人情店として有名だったが、残念なことにこの10月いっぱいで閉店になるという。
安い。
店内。このご時勢なので、各席は、ビニールで仕切られている。
餃子(2人前)とチャーハン。おいしかった。

2020年9月29日(木)

藤田医科大学訪問
少し前に書いたように、新型コロナウイルス感染症に対してiPS細胞由来再生キラーT細胞を用いた治療法が効果がある可能性があると考えている(2020年8月5日の記事参照)。この戦略については、藤田医科大学との共同研究で進めようと考えている。写真は藤田医科大学病院の玄関口。愛知県豊明市にあるが、名古屋市緑区と隣接している。1400床あり、大学病院としては日本一の規模であるらしい。これまでにダイヤモンド・プリンセス号からの患者の引き受け、アビガンの治験、ワクチンの治験など、新型コロナウイルス感染症に対して本邦を先導して取り組んできている。新型コロナの新しい治療法の開発にあたっては、大きな強みを持った医療機関といえる。
藤田医科大学の国際再生医療センターには、素晴らしい細胞製造施設がある。輸血細胞治療科教授の三浦康生先生の案内で見学。三浦先生とは別件で共同研究の話もある(2020年6月30日の記事参照)が、新型コロナ研究でも関わって頂くことになった。なお、この日は写真を撮る時はマスクを外しているが、いずれも写真を撮る時以外はずっとマスクをしていた。
国際再生医療センターのセンター長高橋雅英先生と面談。河本研は、このセンターとは今後深く関わっていくことになる予定。
医学部長の岩田仲生先生と面談。今後の共同研究の進め方について話し合った。
理事長の星長清隆先生と面談。星長先生はずっと再生医療の開発研究に力を入れておられており、さらにこのところ新型コロナウイルスに対しても治験に取り組んで来られたので、私達との共同研究である「汎用性再生キラーT細胞を用いた新型コロナウイルス感染症治療法の開発」を、力強く支援して頂けることになった。
        

2020年9月26日(土)

軽井沢でゴルフ
いつものメンバーで、「三井の森軽井沢カントリー倶楽部」というコースをラウンド。通常は7月の北村先生の誕生日の前後にラウンドする事が多い(2019年7月21日の記事参照2018年7月22日の記事参照)が、今年はその頃はコロナの第2波襲来の最中であったので、延期となった。
山を切り開いた感じのコースで、斜度のあるコースが多く、とても面白かった。
割と早めにあがったので、皆で旧軽井沢銀座あたりを散策。結構人出が多く、嬉しく思った。

2020年9月20日(日)

滋賀県でロケハン
連休の2日目の午後、Negative Selectionの新曲のmusic video作りに向けて、大久保氏と琵琶湖周辺をロケハン。1箇所、良さそうなところを見つけた。帰路、守山市あたりを走行中、荘厳な感じの夕焼けが見られた。

2020年9月15日(火)

長畑君、ホヤの血液細胞の研究に着手
長畑君は血液細胞の分化過程の研究をしている。河本研が20年以上前からずっと取り組んできたテーマだ。河本研は最近iPS細胞から再生したT細胞を臨床応用にもっていく研究に力を入れているが、一方で新学術領域「非ゲノム複製機構」にも参加しており、造血初期の系列決定過程で何が起こっているかをこれまでに引き続いて研究している。
「個体発生は系統発生(進化)の過程を繰り返す」というヘッケルの反復説があるが、血液細胞の分化過程にも当てはまるのではと考えている。長畑君は、研究を進めるうちに、より原始的な動物の血液細胞がどうなっているのかを調べて見たいと思ったようだ。
左の図は免疫系の進化についての講義の中でよく使う、動物の進化のスライド。口と肛門のでき方で大きく分けられる。
前図の枝をベースに描いた動物の系統樹。ここでのポイントは、脊椎動物だけが獲得免疫系を持っているということと、ホヤは我々脊椎動物と同じ脊索動物門に属し、脊椎動物に近いということ。ホヤの成体は固着性であるが、幼生は、オタマジャクシのような形態をしており、脊索様の組織を有している。つまりホヤは脊椎動物の直近の先祖なので、長畑君はその造血系を調べると脊椎動物の造血系の祖先の様態がわかると考えた。
少し前に長畑君が東北旅行の土産としてラボにくれた「ホヤの刺身」。冷凍のままで置いてあったものを、ホヤ研究の開始に合わせて解凍した。
私は海産物は大抵好きだが、ホヤは独特の臭いがあり、ちょっと苦手だ。ラボメンバーの多くは食べたことがないというので、細かく刻んで、配ってまわった。「磯臭い」「カキの臭いを強くした感じ」「日本酒と合うかも」などのコメントが得られた。
この日の午後、理学部の2号館へ。
理学部の動物発生講座准教授の佐藤ゆたか先生(写真右)のラボを長畑君、増田さんと共に訪問。佐藤先生はホヤの発生過程を研究されている。ナショナルバイオリソースプロジェクトの一翼を担っていて、ラボでカタユウレイボヤを維持されている。大きな海水槽があった。至適温度は20度くらいとのことで、部屋もちょっとひんやりしている。
佐藤ゆたかラボHP:
ナショナルバイオリソースプロジェクトHP:
ホヤのアップ。口が二つあるが、長い方が口で短い方が肛門とのこと。水槽で飼育するとある程度以上大きくならないので、時々舞鶴水産実験所に預けて海の中で育てて大きくするらしい。舞鶴に送れなかった余剰分とのことで1カゴ分をいただくことができた。
河本研に持ち帰り、血液細胞を採取。血管系は開放系ではあるが、心臓がある。心臓に流れている液体は血液であろうということで、心臓部分に穿刺して採血し、解析した。フローサイトメトリーでは血液細胞らしいパターンが得られ、大きい目の細胞をセルソーターで集めてからサイトスピンした標本を染色したら、マクロファージ様の細胞像が得られた。こういう研究は、ワクワクする。
ホヤの心臓が拍動する様子:
         

2020年9月12日(土)

第12回日本血液疾患免疫療法学会学術集会
表記の会が千里中央の千里ライフサイエンスセンターで開催された。10時半頃の、千里中央駅の広場。普段を知らないので何とも言えないが、人通りがまだかなり少ないように思われる。
Web参加と現地での参加の両方が可能な形で開催され、私は現地参加にした。150人くらいの会(2019年10月5日の記事参照)であるが、今回は現地での参加は40人くらいの感じだった。それでも、2月22日の免疫治療学会以来の7ヶ月ぶりの学会参加だったので、「久しぶりに帰ってきた」感があり、とても楽しかった。
CAR-T細胞療法についてのランチョンシンポジウムの後、岡芳弘先生による会長講演は、WT1ペプチドワクチンの話をされた。岡先生は杉山先生と共にWT1ワクチンを開発されてきた先駆者。近々、大規模な第三相試験が始まるらしい。私たちもWT1抗原を標的にした再生T細胞療法を開発しているので、WT1ワクチンには大いに期待している。
自分の発表の時に、イントロで使ったスライドの一部。第二波は、第一波より大きいことがわかる。大阪や京都では、緊急事態宣言解除後に新規感染者はほぼゼロだったのに、東京では押さえ込めていなかったことも読み取れる。このために、移動自粛の解除後に東京から地方に拡がってしまったのだと思われる。しかし、日本人は偉いもので、何だかんだ言いながらも、感染爆発は回避できているから、大したものだ。

2020年9月5日(土)

台風10号
9月1日に台風10号が発生。左の図は発生当時の進路予想図。超大型になると予想された。
9月5日土曜日、鴨川の西の岸から東を望んだ写真。台風はまだはるか南方のかなたの、沖縄の東の南大東島あたりだったが、雲の流れは南東から北西に向かっており、気象現象としてのスケールの大きさを実感できた。
台風は9月6日日曜日に九州の西側をかすめるように北上。幸いにも被害は予想されたほどではなかったようだ。予想経路の中ではやや西寄りの経路をとったことになるが、しかし日時も経路も発生当時に作られた予報円の範囲内だ。予報システムは大したものだと思った。
台風が過ぎた後も、しばらく不安定な天気が続いた。9月10日木曜日の午後6時過ぎ、教授室から夕日の中に赤っぽい虹が見えた。

2020年8月26日(水)

前田君が来訪
2017年7月からNIHのRestifoラボに留学中の前田卓也君が、Visa変更のために一時帰国。2週間成田に滞在した後、帰京。河本研にも顔を出してくれた。懐かしい。
ラボ内セミナーをしてもらった。ナイーブT細胞の再生にこだわった、いい研究をしている。9月にはアメリカに戻るとのこと。

2020年8月21日(金)

岡部先生が来室
ウイルス再生研のシステム免疫学分野特定准教授の岡部泰賢先生が、9月から大阪大学免疫学フロンティア研究センターに恒常性免疫学分野の特任准教授として着任されることになり、挨拶にこられた。岡部先生とは、加藤先生や上堀先生と一緒に、時々飲みにいったりしていた(2019年7月24日の記事参照)。新天地での活躍を祈念します。
          

2020年8月16日(日)

今年の送り火
今年の五山の送り火は、見物客が集まるのを避けるために各山とも火の数を減らして実施された。写真は家のテラスから観た大文字山。8時頃、まず真ん中の大の字の交点に当たる箇所に点火された。
大文字では、火は大の字の先端の5箇所と真ん中の交点を合わせて6箇所。ご先祖様の霊を見送る火なので、規模は小さくしても開催することに意義があるということだろう。他の山は妙、法、船形、左大文字が1箇所、鳥居が2箇所。来年は普通に催されて、「去年は大変だったねえ」と言えることを願う。
          

2020年8月5日(水)

新型コロナウイルス感染症治療法の開発の話が読売新聞の夕刊に掲載された
 新着情報欄の6月22日の記事に書いた(新着情報欄参照)が、今年度、AMEDの「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬開発」に、河本が代表として申請していた課題「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する汎用性T細胞療法の開発」が、採択された(令和2年度採択課題一覧)。この研究についての紹介記事が、この日の読売新聞の夕刊三面記事欄に掲載された。
 河本研は、新型コロナウイルス感染症に対して、汎用性のキラーT細胞製剤を用いた治療法の開発を始めている。COVID-19に対する免疫反応としては、抗体の話がよく出てくるが、抗体は細胞内に入り込んだウイルスを攻撃することはできない。ウイルスを完全に撃退するためには、感染細胞を見つけて殺傷する事ができるキラーT細胞が決め手になる(ウイルス に対する免疫応答の仕組み(1)参照)。ワクチンの場合も、抗体だけでなく、キラーT細胞を誘導する事が重要だとされている。
 ウイルス感染細胞を殺傷できるキラーT細胞をあらかじめ作って凍結保存しておいて、必要時に解凍して患者に投与するという方法をとる。免疫療法としては、ワクチン、特異的抗体の投与、元患者血漿の投与などのような方法の開発が世界中で数多く進められているが、我々の戦略はそれらとは全く異なり、現時点では世界で我々だけと思われる。免疫の暴走が起こらないかとの懸念を出されるかもしれないが、サイトカインストームなどの過剰な免疫反応は、主にヘルパーT細胞とマクロファージが起こしている事であり、キラーT細胞は粛々と感染細胞を殺傷するだけである。免疫を総動員するのは、敵国の大将を殺害するために戦争を仕掛けるようなものであるが、特異的なキラーT細胞を使う方法は、ゴルゴ13を送りこむようなものだと言えよう。
 より具体的には、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)に特異的なT細胞レセプター(TCR)をiPS細胞に導入し、そのiPS細胞からSARS-CoV2特異的細胞キラーT細胞を再生して、それを患者に投与するという方法をとる。TCR遺伝子をiPS細胞に導入してそのiPS細胞からT細胞を作るという方法は、TCR-iPS細胞法と呼んでおり、2014年に出願済み(PCT/JP2015/070623)で、欧州では特許査定を受けている。
 本年度はデューク・シンガポール国立大学のAntonio Bertoletti研との共同研究として進めている。Bertoletti研はこれまでにB型肝炎ウイルス抗原を標的にした肝臓がんの自家養子免疫療法の臨床試験などを行っており、我々は少し前からその汎用化に向けての共同研究をしている。
 COVID-19に対して、Bertoletti研でCOVID-19から回復した元患者のキラーT細胞からSARS-CoV2特異的TCRをクローニングし、そのTCRを用いて、自家移植の系でTCR遺伝子導入T細胞を用いた養子免疫療法の開発研究を進めている(紹介記事)。また、この新聞記事にも少し紹介されているが、Bertolettiらは最近、Nature誌に新型コロナウイルス に反応するT細胞の話を発表している(AASJの西川先生による解説記事)。
 我々は、Bertoletti研から入手したTCRを用いて、自家移植ではなく、他家移植の系の開発を進める。ウイルス再生研の強みは、ウイルス感染細胞を用いた細胞傷害活性の測定が研究所の施設を用いてできる事で、そのような実験は朝長啓造先生の協力で進めることになっている。なお、シンガポールで採取されたTCRであるが、日本人に高頻度に存在するHLAに拘束性のTCRが得られた場合は、そのTCRを日本で臨床試験に使う可能性はある。
 一方で、日本人に合うTCRを、日本人の検体から採取するという研究も、今年度中に始めたいと考えている。この研究は、主に藤田医科大学との共同研究として、藤田医大での臨床試験を目指して進める予定だ。藤田医科大学は、関連病院でダイヤモンド・プリンセス号の患者を引き受けたり、アビガンの臨床試験を行ったりするなど、COVID-19への取り組みがとてもしっかりしている。いい共同研究になればと思う。
          

2020年7月30日(木)

新学術領域「非ゲノム情報複製」の領域会議
表記の会がWeb会議の形で、今月、2回に分けて開催された。この日は2回目で、私も15分の枠で発表を行った。うちの研究室からは増田さんと長畑君が参加。
50名くらいが参加。終了後、参加者で記念写真。ここに写っているのは全参加者の半分くらい。
発表の1枚目で使ったスライド。この前の日の29日に、京都と大阪で新規感染者数が過去最多人数だった。京都や大阪は一時ほぼ0人が続いていたので、人の移動によって持ち込まれたということであろう。まあ、いつまでも移動制限をかける訳にはいかないので、仕方がない事なのであろうが、それにしてもこの増え方を見ると第2波は第1波よりも大きくなりそうで、嫌な感じだ。

2020年7月27日(月)ー29日(水)

東京出張
新型コロナの第2波が都市部に来ているので、あまり出かけたくなかったが、会社関係の用務で東京出張。あるビルの入り口では遠巻きに体温を測る装置が使われていた。
瞬時に体温が表示される。便利だ。
東京駅近くのドーミーインというホテルに宿泊。夜9時30分以後に夜泣きそば+飲み物1缶無料、というサービスがあった。
早めの夕食で小腹が空いたので、夜泣きそばをいただく。半人前くらい。あっさりしたしょうゆ味のラーメンで、美味しかった。金麦はビールではなく「第3のビール」。初めて飲んだが、なかなか美味しかった。

2020年7月17日(金)

今年の祇園まつり
この日、夕方、四条方面に出かけたら、祇園祭の行列をみかけた。本来はお昼に盛大に山鉾巡行が開催されるはずの日だったので、その代わりの行列のようだ。寂しい限りだ。
行列の中には小振りな鉾のような山車も見られた。

2020年7月15日(水)

渡邊先生の傘寿のお祝い
この日、渡邊先生は80歳になられた。T細胞やB細胞が見つかる前から免疫学の研究をされてきたのだから、免疫学の歴史の体現者だ。この日の挨拶は「30歳台での経験は貴重だから大事にしましょう」というメッセージだったが、Max Cooper、 Niels Jerne、Fritz Melchersなどの免疫学の偉人達との交流について語られた。また、バーゼル研究所に初めて行かれた時に利根川進からいきなりデータを見せられて説明を聞かされたが、それが後にノーベル賞を受賞した遺伝子再構成を証明するデータの出来立てホヤホヤであったという話もあった。こういう話は是非著書にしていただきたいものだ。
手にしておられるのは、記念品のマグカップと湯呑茶碗。私(河本)の描いた似顔絵が入っている。
皆で記念写真。ラボ内でもまだ日常的にマスクを使用している。渡邊先生だけ外していただいた。
湯呑茶碗のアップ。
裏面には小林さんがネットから拝借したマウスの鳥獣戯画。かわいい。
マグカップのアップ。
似顔絵の原図。今回の傘寿の会の企画者である小林さんと増田さんから、「カップに似顔絵を入れたいので描いてください」と頼まれた。似顔絵は、さっと似たようにかけるときと、上手くいかなくて苦労する時がある。今回は、渡邊先生の写真をみながら、さっと描いたら、わりといい感じになったので、使ってもらった。渡邊先生がこの絵を見た時の第一声が「こんなに老けてるかなあ」だった。
線描を取り込み、フォトショップで着色した絵。
      

2020年7月8日(水)

京都も豪雨
この何日間か九州に甚大な被害をもたらし続けている線状降水帯による豪雨が、京都も襲来。
朝8時半頃、鴨川と高野川が合流する地点を南からみたところ。左側の岸辺の跡を見ると、ピーク時は、一昨年のいわゆる「西日本豪雨」時に匹敵する水量だったようだ(2018年7月6日の記事参照)。2013年の台風の時も同じ位の水位だった(2013年9月16日の記事参照)。
渡邊先生から頂いた画像。同じ頃の、京都の三条大橋あたり。
      

2020年7月7日(火)

斉藤先生来訪
藤田医科大学の斉藤邦明先生(写真中央、学長補佐/研究担当)が来られた。先週は藤田医科大学の三浦先生らと打ち合わせをした(2020年6月30日の記事参照)が、少し違う形での研究の進め方について、打ち合わせをした。岸本さんにも参加してもらった。

2020年7月6日(月)

コロナ近況
日本中が一喜一憂する新規感染者数の推移。7月4日までの東京での推移を貼り付けておく(yahooの新型コロナ関連サイトより少し改変)。6月から7月にかけて増加傾向は明らかだ。ただ、7月に入ってからの100人越えの連続は、夜の街関係者を積極的に調べたからという話もあり、政府や東京都はあまり危機感を募らせていない。
京都はといえば、5-6月はずっとほぼ0人が続いていたが、ここ数日はまとまった数が見られるようになってきている。移動自粛が全国的に解除になったからであろう。いたしかたないと思われる。
            

2020年7月3日(金)

久々の東京出張
6月の終わり頃から、東京では新規感染者の増加傾向が続き、京都でもやや増加傾向が見られた。京大病院は、7月1日から、外食に関して、5月までと同様の厳しい制限(複数人数での外食禁止)を復活させた。ウイルス再生研は、外食に関しては再厳格化はしない事になったが、緩和はしないで7月中は6月と同じレベルの制限を続けることになった(ラボ外メンバーとの酒席会食禁止)。
とは言え、全国的に移動制限は緩和されていることもあり、京大病院にしても、ウイルス再生研にしても、重要な会議に参加する場合の出張は認められている。3月から6月までずっと京都にいたので、4ヶ月ぶりの出張である。3日は朝から東大医科研で用務があるので、前日入りし、品川泊。新幹線に乗れるのが嬉しい。写真は、17時半頃の京都駅新幹線の構内。人がとても少ない。
19時半頃の、品川駅のコンコース。こちらは割と人が普通にいる印象。
医科研の正門横に、「ゆかしの杜(もり)」という建物ができていた。港区立郷土歴史館であるらしい。旧公衆衛生院を部分改装して作られたとのこと。そう言えば、長い間、工事をしていた。
正面からの写真は撮り損ねたので、ゆかしの杜HPから拝借。立派な建物だ。昔の建造物は風格があっていい。なお、2018年11月1日に開館したとのことで、出来立てという訳ではない。2019年4月に一度医科研には来ているのであるが、その時は別ルートを辿ったのか、気がつかなかった。
帰りの新幹線。13時頃品川発。6号車で、乗車率は、21/75=28%だった。今回の東京出張でやや心外だったのは、研究所の色々な人から「先生、くれぐれも、気をつけてくださいよ」と言われたことだ。ラボニュース欄に時々新宿のゴールデン街あたりに行った記事を載せている(2019年2月2日の記事参照2018年12月13日の記事参照)からかとも思われるが、毎回行っているわけでもないし、さすがにこのご時勢に行くはずもなかろう…。
     

2020年6月30日(火)

藤田医科大学の三浦グループとの共同研究
三浦康生先生(藤田医科大学輸血部教授)が来訪。共同研究についての打ち合わせをした。再生T細胞の凍結、解凍、再活性化などについての開発研究を進める。写真向かって左端の永野君から、時計回りで杉浦縁先生、私、三浦先生、 藤井紀恵先生、松浦秀哲先生、増田さん。なお、窓を開けており、打ち合わせ時はマスクを着用していた。

2020年6月28日(日)

キョウチクトウ
教授室から見える樹々の中に、キョウチクトウがある。初夏から夏にかけて咲く。あちこちに植えられているが、実は枝も葉も、猛毒である。
        

2020年6月26日(金)

関西は健闘
これまでもラボニュース欄では東京の感染者の推移を貼り付けてきたので、最近の推移を示しておく。5月25日に緊急事態宣言解除された後、東京ではじわじわと感染者が増えている。6月24日に感染者が55人で、久しぶりに50人越えとなった。以下の図はYahoo Japanの新型コロナウイルス感染症まとめのサイトから転載し、少し加筆した。
京都はどうか。縦軸の数字は違うが、4月から5月にかけての推移は東京とよく似ている。一方、緊急事態宣言後は、東京と違って、抑えるのに成功しているようだ。
こうしてみると、大阪もよく健闘している。東京は大都市だからコントロールが難しいということもあるかもしれないが、大阪は都市の規模として東京の半分くらいはある大都市であり、よく頑張っていると言えるだろう。
京都と大阪が良くやっているというより、全国のほとんどの県がおおむねうまくやっているようだ。一方、最近北海道のニュース(昼カラとか)をよく耳にするが、確かに苦戦している(左図)。他に、神奈川県、埼玉県、福岡県なども、緊急事態宣言解除後に波が来ているようだ。
さて、6月19日から、全国的に移動制限が解除になった。とはいえ、人が集まるイベントについては、全く自由という訳ではない。感染対策を講じる必要があり、それに所属機関ごとのルールもある。7月、8月に計画されていた学会、研究会はほぼ全てが中止か延期になった。150人規模のKTCCも、元の予定の5月29-30日から8月21-22日に延期して計画されていたが、来年度に延期となった。9月以後は、規模に応じて、また会によって対応が異なる。9月19-21日に京都での開催予定であった組織適合学会(300−400人規模)は来年度に延期になった。10月15-17日の臨床免疫学会(400人規模、軽井沢)は今のところ開催予定。12月8-10日の免疫学会(2000人規模、千葉)は中止で、代わりにWebでシンポジウムや総会が開催される予定だ。 
日本では新規感染者が1日に100人とかのレベルであるが、世界では1日に10万人を超えている。累計感染者は毎週100万人単位で増えて、近々1000万人に達そうとしている。恐ろしい数字に思えるが、このペースだと一年後でも累計感染者は6000万人であり、世界の人口(70億人)の1%にも満たない。仮に実際の感染者はこの10倍いるとしても、人口の10%以下しか感染してないことになる。
言うまでもないことだが、致死率を劇的に下げる治療法が開発されたら、そもそも感染を怖れなくてすむようになる。抗ウイルス薬の開発が期待されるところだ。一方、免疫関連の治療法としては、一般にはワクチンや抗体療法の開発が盛んに進められている。やや我田引水になるが、私はキラーT細胞が切り札になると考えている。うちの研究室では、汎用性即納型T細胞製剤の開発に着手した(新着情報欄参照)。
                

2020年6月17日(水)

あなむらのくしだんご
この日の夕方、リバーセルの定例役員会議が、クリエーションコア御車にあるリバーセルの事務所で開催された。会議といっても、代表取締役社長の佐治先生と取締役の私の二人だけの打ち合わせだ。庶務を担当してくれている管理部の本村さんが、先日の打ち合わせの時に話に出た草津市穴村町の「あなむら名物のくしだんご」を買ってきてくれた。吉田玉栄堂(ぎょくえいどう)という名前の店の商品で、売っている日や販売数が限られているのでかなり入手困難とのこと。みたらしだんごのプロトタイプという説もあるようだが、味はみたらしだんごのようにあまからい訳ではなく、ストレートに醤油味。とても美味しい。竹を割いて作った串に50個を刺した上でこんがりと焼かれており、手間がかかってそうだが、一串(50個)で350円と、コスパは良さそう。
草津出身の佐治先生は、久しぶりのくしだんごに「そう、これや、これや」とご満悦。

2020年6月17日(水)

一瀬君いよいよ留学
一瀬君がいよいよこの次の週に留学で渡米するとのことで挨拶に来た。2013年の7月からうちの研究室に参加し(2013年7月3日の記事参照)、再生組織に対してNK細胞が起こす免疫反応についてのいい仕事をした(2017年9月1日京大HP記事参照)。2017年4月からは松田道行先生のラボに移動し、NK細胞の活性化の可視化の研究などに取り組んでいた。留学先はNIHのRonald Germainラボとのこと。頑張ってきて下さい!

2020年6月16日(火)

井上匡美先生来訪
府立医科大学の呼吸器外科の井上匡美教授(向かって左から2人目)は、肺がんなどの呼吸器の他に、胸腺腫や胸腺がんなどの縦隔腫瘍も専門とされている。胸腺がんは勿論がんだから悪性であるが、胸腺腫も悪性度は低いとはいえ基本的には悪性腫瘍である。マウスでは胸腺腫といえば胸腺細胞由来であるが、ヒトでは胸腺上皮細胞に由来し、いろいろな組織型がある。また、重症筋無力症などの一部の自己免疫疾患は、胸腺腫に合併することが多いことが知られている。この度、胸腺腫や、胸腺腫と自己免疫疾患の関係などの研究をご一緒させていただくことになった。府立医大大学院2回生の古谷竜男先生(写真中央)がうちの研究室に顔を出されるようになる。胸腺やリンパ組織の研究になるので、渡邊武先生や増田さんにも関わってもらうことになった。よろしくお願いします! なお打ち合わせ中は終始マスクをしていたが、直前にマスクを外して撮影した。

2020年6月13日(土)

アベノマスクが届いた
ようやく届いた、アベノマスク。珍しいものでもないが、ずっと先にこの頃の記事を見直した時のために、象徴的なアイテムの一つとして写しておいた。
       

2020年6月12日(金)

栃木からの便り
毎年栃木県の獨協医科大学に、医学部の解剖学の講義の一部として、2回生向けに、免疫学や再生医学についての講義に行っている(2019年6月24日の記事参照2018年6月25日の記事参照)。今年は、6月22日月曜日の予定。全国的に大学の講義も少しづつ元に戻りつつあるが、獨協医科大学では6月一杯はWeb講義だそうで、2コマ分の動画を作成して送ることになった。徳田先生をはじめとする解剖学講座のスタッフの方々から、栃木便りとして、いろいろなものを送っていただいた。まずは餃子像もなか。
昨年餃子像の横で撮った記念写真。手に持っているのはレモン牛乳。
気になっていた餃子ポーチと、餃子味のポテチ。少し遅れて届いた。ありがとうございました!
        

2020年6月9日(火)

誕生日のお祝い
59歳になった。毎年、誕生日には夕方くらいにケーキとお茶の会のようなものを催して頂いている。研究所の規制もずいぶん緩んできたが、まだ大勢が参加する歓送迎会などは禁止されている。お茶菓子ではなく、フラワーアレンジメントをいただいた。ちょっと変わった組み合わせで、素晴らしい。
花の部分のアップ。赤はシャクヤク、ケイトウ、コチョウラン、緑は八重のトルコキキョウとアンスリウムだと思われる。緑色の花の使い方が秀逸だ。

2020年5月29日(金)

鴨川の夕暮れ
このところ京都府は新規感染者0人が続いている。5月28日付けで、同居の家族やラボメンバーとは、外食してもよいことになった。この日、日没の頃に一人ですぐ近くの鴨川の堤防を少し散歩した。夕焼け雲がやけにきれいだった。写真は19時26分頃。

2020年5月27日(水)

免疫ボードゲーム「イミュニタス」アップグレード版の販売開始
以前に紹介したように、東大医学部4回生の中野誠大(まさひろ)君と古久保宙希(はるき)君が中心になって、免疫をテーマにしたボードゲーム「イミュニタス(immunitas)」が作られた(2019年5月29日の記事参照)。私も1セット購入し、今年の新年早々中野君が河本研に来てくれて、秘書の中宮さんにも参加してもらってプレーをした(2020年1月7日の記事参照)。免疫応答の仕組みがよく反映されており、さらにボードゲーム特有の醍醐味もよく取り込まれたゲームになっていて、大変楽しめた。私もあれこれ物作りをする方であるが、このゲームについては、よくこんなものを作れるものだと、感服した。
最近、そのアップグレード版である「イミュニタス・アカデミア」がリリースされたとの知らせを、中野君からいただいた。試行錯誤を繰り返して、抗原特異性や抗原情報の伝達過程についてより学術的に正しくなり、またゲーム性を上げる工夫も加えたとのこと。興味のある方は、下記のリンクからどうぞ。
immunitasのルール説明記事
immunitas:academia(基本セット)の購入リンク
今回はさらに、様々な免疫細胞(メモリーB細胞、自然リンパ球など)を加えた拡張セット「イミュニタス・アドバンスド」も作成したとのこと。コロナ禍で外出の自粛が続く中、こういうゲームをまったりとプレーするのも楽しそうだ。
immunitas:advanced(拡張セット)の購入リンク
         

2020年5月19日(火)

「コロナ制圧タスクフォース」発足
左の図は昨日(5月18日)までの東京の感染者数。ラボニュース欄ではずっと東京の感染者数のグラフを貼りつけてきたので、今回も東京のグラフを載せた。4月7日に緊急事態宣言が出された時は、海外から「手遅れだ」「強制力も罰則もない」などと懸念が出されていたが、このデータを見ると、なんだかんだ言っても、日本人は偉いなあと感心する。京都府は昨日までの4日間、感染者0人が続いている。しかし、まだ終わったわけではない。緊急事態宣言レベルの対応をとると、日本では感染者数を制御できるということがわかっただけだ。今後規制を緩和していくと一定数の患者が発生するようになるだろう。新型コロナとの戦いはまだまだ続く。
そんな中、最近、「コロナ制圧タスクフォース」という、勇ましい名前のプロジェクトが発足した。「タスクフォース」は「機動部隊」という意味。慶應大学の金井隆典先生(内科学消化器教授)が統括。私も発起メンバーに加えていただいている。「重症化する人とそうでない人を分けるのは何か」という問題に、ゲノム解析によって取り組むというのが趣旨。HLA解析も行うという。これまで私もあれこれと考察をしてきた(2020年5月8日の記事、同3月16日の記事参照)が、重症化する例は、単に高齢者で免疫が弱いというだけでなく、記憶細胞による交差反応や、自己免疫疾患的側面が関与しているのではと考えているので、こういうプロジェクトはとても大事だと思う。ただし、解析のためには相当数の症例を集める必要があると考えられ、国による強力な支援が必須であろう。
コロナ制圧タスクフォースHP:
タスク発起メンバー:
事業開始のお知らせ(金井先生):
なお、このHPの「最近の更新」欄に、一般の人向けの、免疫の仕組みについての解説記事を載せている。
ウイルスに対する免疫応答の仕組み(1):
ウイルスに対する免疫応答の仕組み(2):

2020年5月14日(木)

新学術領域「非ゲノム情報複製」領域会議
新学術領域「非ゲノム情報複製」は2年目に突入。公募班が加わり、本来なら皆で集まって領域会議を行いたいところであるが、当面はWeb会議でやるしかない。この日は計画班員とその分担者でZoom会議が行われ、今後の方針について話しあわれた。メインモニターに写っているのは領域代表の中西真先生(東大医科研)。
         

2020年5月10日(日)

鴨川を散歩
20年くらい前、自宅のテラスで、大型の水槽の上にスチロール材で段々畑のような構造を作り、アクリル板で温室のように囲い水をポンプで水を循環させて、食虫植物ガーデンにしたことがあった。最初に数年はよかったのだが、次々に消滅していき、ついにヨツマタモウセンゴケだけになった。奥で咲いているのはシランで、庭に植えている株から種が飛んできて勝手に生えてきたもの。
ヨツマタモウセンゴケのアップ。オーストラリア原産。この株は毎年とても元気がいい。
ラボの近くのコンビニで昼食を買った後、川端通りを渡って鴨川を少し散歩。人出はまばら。こういうところにラボから2-3分で来れるのは、大変ありがたいことだ。
カモと、大きい魚(画面中央あたり)。
大きい魚は、ニゴイだと思われる。何度かラボニュース欄にも登場している(2018年3月29日の記事参照)。以前にも書いたように、コイは外来種だが、ニゴイは在来種。大切にしたいものだ。
カモの番いと、アオサギ。この他にカワウ、トンビ、スズメ、ハトが見られた。ベンチに座ってオニギリを食べていて、ちょっとよそ見をしていたら、背後からの不意打ちで、トンビにオニギリを取られかけた。ケガはしなかったが、指がちょっと痛かった。トンビに襲われたのは初めてで、羽音がすごく、ちょっと怖かった。鴨川では小さな子供はよく襲われる一方、大人は大丈夫ときいていたが…。なめられたものだ。
         

2020年5月8日(金)

新型コロナウイルス感染症に関する考察
 左の写真は5月5日のお昼に出現した日暈(にちうん)。そう珍しい現象ではない。吉兆とされているらしいが、呼応するかのように、連休中の東京での感染者数には、収束の傾向がみられる(図1)。
 連休中に色々な人が新型コロナウイルス感染症について情報や考察を発信している。私も少し前に考察を書いた(3月16日の記事参照)が、その続きを少し論じておこうと思う。

 まずは病態について。最近、病態に関する情報が増えてきている。例えば、サイトカインストームとかNETs(好中球が出すネット状の構造物)が関与しているとかの話が出てきている。これらの知見は治療に繋がるだろうし、重要な情報であろう。ただ、これらの話は重症化した後の病態の話であって、なぜ重症化する人とそうでない人がいるのかの説明にはなっていない。
 そういう点では、私は少し前に論じたように、獲得免疫が関与する可能性はあると考えている。
 現在なされるべき大事なことの一つは、重症肺炎を起こしている時点において組織中のウイルス量を測定することであろう。ある時点で急激に病態が進むという現象は、ウイルスと自然免疫系のゆっくりとした攻防では説明しにくく、獲得免疫系が関わっている可能性が高い。もしウイルス量が増えているのであれば、急激にウイルスが増加する仕組みを解明する必要がある。その場合、いわゆる抗体依存性感染増強が起こっている可能性を考える必要があろう。これは抗体を利用してウイルスが食細胞に感染するというメカニズムで、ワクチンに絡んだ議論でよく出てくるが、自然経過で出現してもおかしくない。この場合、ウイルス量が増加した事に対して自然免疫系が最終的なエフェクターとして働いて、激しい炎症を起こしているという解釈が可能だ。一方、ウイルス量が大して増えてないのであれば、炎症の基盤はキラーT細胞かヘルパーT細胞が過剰に反応している事に起因する可能性が出てくる。言い換えれば、「自己免疫疾患」が起こってしまっているということだ。そうであれば、T細胞を抑制するような強力な免疫抑制が必要ということになる。
 どちらのケースであっても、新たに誘導されたエフェクター細胞が誤作動を起こしている可能性もあるかもしれないが、若い人に重症化が少ないという点を考慮すると、前回論じたのと同じように、何らかの抗原に対する記憶細胞が起こす交叉反応性が起こしている可能性も考慮に入れる必要があると考えている。
 これも前回論じたことであるが、上記のように重症化に獲得免疫系が関わっているのであれば、HLA型との相関を調べる必要がある。HLA型との関連を論じる論文も出ている(Nguyen, Human leukocyte antigen susceptibility map for SARS-CoV-2, J Virology, published on line)。ただし、この論文は、単に感染への抵抗性があるかないかをin silicoで予想しているだけで、実際に患者のHLA型を調べた訳ではないし、また、特定のHLAを持っていることによる過剰な反応かもしれないという視点が欠けている。この論文ではクラスIしか調べていないが、抗体が関わるのであればクラスIIも調べておく必要があろう。

 抗体検査について。PCR検査で陽性であることは、現にウイルスが体内にいることを示す。一方で、抗体検査で陽性であること(特にIgGが陽性であること)は、感染してすでに免疫を獲得していることを示している。どれくらい感染が拡がっているかという点とともに、どれくらいの人がすでに免疫を獲得しているかの指標になるので、是非進めるべきである。ただし、現時点では特異度と感度について、きちんと論じられていないように思われる。
 特異度は、陽性と出た時にどれくらい信頼できるかという数字で、例えば95%の特異度と言われれば、感覚的には信頼できそうと思える。95%の特異度というのは、絶対に陰性であるべき対象(例えば今回でいえばコロナウイルス出現以前の血清)で、100例調べたら5例陽性と出てしまうということだ。陽性率の測定値が数十%くらいであれば概ね数字を信じて良いと言えるが、測定値が5%程度である時には、全く信じられないということである。
 抗体検査で陽性である事は「あなたは免疫を持っています」という事を意味するので、特に問題になるのは特異度だ。PCR検査は特異度は高い。一旦陽性と判断されたら、それはほぼ信頼できる(検査官がコンタミさせるなどのヘマをしない限りは)。黒か白かというデジタルな検査である。一方、抗体検査は、白から黒にかけての連続的な灰色の測定値のどこに線を引くかという、アナログな検査だ。線引きの設定を厳しくすることで特異度を100%に上げることは簡単だが、そうすると感度が下がってしまう。感度を保ちつつ特異度を上げることは一般に難しい。
 例えばカリフォルニア州サンタクララ郡で行われた抗体陽性者の検査では、3330人を調べて陽性者が1.5%(50例)検出されたという。このデータからあれこれ計算して住民の2-4%が陽性とされている。この検査の特異度は99.5%とのこと。0.5%くらいは偽陽性を出してしまうということだ。特異度に関しては新型コロナウイルス出現以前の血清を用いたテストで371検体中2検体が陽性であったということから99.5%と算出されたようだが、算出に使われている数字が少ないように思える。
 神戸で1000例調べて3.3%が陽性というデータが発表されている。用いられているクラボウの検査キットはIgGについては521例の臨床検体を用いて特異度100%感度76.38%と算出されている(図2)。特異度100%とされていても、検査対象の中で陽性率が低い場合は、よほど慎重に測定する必要があろう。抗体の検査は保存状態や検査施行者によって変わるので、同じ施行者が同じ保存条件の検体で、さらに同じ地域で採取された絶対陰性コントロールをおいて調べる必要があるように思われる。神戸での検査に際しては、同数の絶対陰性検体を置いて比べた訳ではなさそうだ。抗体陽性者率は、非常に重要な数字であるだけに、特異度や感度の管理は厳密に行う必要があろう。
 大阪で312例を調べて3例陽性者が出たから1%の人が抗体陽性というデータが報告されている。特異度を50例の絶対陰性検体(2018年の検診受信者の血清)で測定して100%としているようである(図3)。前記の2ケースと同じく、1%の陽性率を論じるには、50例の絶対陰性検体では少ないように思える。
 現時点での数字についてやや慎重な意見を述べたが、抗体検査を進める意義はとても大きいと考えている。現在の精度であっても、陽性率が数十%になれば、十分信頼できるようになるだろう。そういう意味では、ニューヨーク市で25%という数字は、信頼できそうである。一方、数%という低い陽性率の場合でも、精度管理のための検体数を今後増やしていけば、より信頼度の高い結果が得られるようになるであろう。

 その他雑感。今後どうウイルスと付き合って行けばいいだろうか。一定の割合で犠牲者が出ることを受け入れるというスウェーデン的な死生観で良いのであれば、いっそのこと規制を設けず成り行きに任せればよい。そうでないのであれば、ワクチンか特効薬が開発されるまで、だましだまし付き合うしかない。
 何故東アジアでは制御できて欧米で感染爆発が起こったかという疑問には、様々な論点があるが、日常の生活習慣という要因が関与しているのは間違いないであろう。東アジアでは握手・ハグ・キスをあまりしない、マスクをする、手をよく洗う、家で靴を脱ぐなどだ。コロナが終息するまでの数年間、一時的に多少生活習慣が変わることくらいは、さして大きな問題ではなかろう。
 数年でコロナ禍が終息したら、今回槍玉に挙げられていたライブハウス、スポーツクラブ、夜の接待などの多くの社会活動や、あらゆる娯楽が、そのうちほぼ元の形で完全復活するだろう。パンデミックでもないのに、3密を禁じる理由はないからだ。一方、生活習慣の変更をいつまでも続けるか否かというのは、人類に課せられた課題だと思われる。またいずれ必ず襲いかかってくるパンデミックに備えて、人類は未来永劫に生活習慣を変えることを学んでもいいのではないかと思う。次のパンデミックが来た時、社会活動は即座に制限がかけられるが、例えば靴を履いたまま家に入るなどの生活習慣はすぐには修正できないからだ。今回の欧米での感染爆発にどの生活習慣が寄与していたかが今後の解析で明らかになれば、そういう習慣は普段からやめておくのがよいという議論になると思われる。厄災から学ぶのが人類の叡智というものであろう。

2020年5月1日(金)

緊急事態宣言の延長
東京を含む7都道府県に緊急事態宣言が出されたのは4月7日。東京での4月29日までの新規感染者のデータ(左図)を見ると、非常事態宣言の2週間後の4月21日以後は、新規の感染者数が減りつつあるように見える。しかし、緊急事態宣言下でもこれだけの感染者が発生し続けているとも読め、油断できる状態ではないと言える。緊急事態宣言は当初は連休明けまでということであったが、5月末までに延長されることになりそうだ。それに合わせて、ウイルス再生研でも4月17日に出されたレベル3の規制(4月25日の記事参照)が、5月末までに伸ばされた。

2020年4月30日(木)

フェルト製免疫細胞キャラ
少し前に書いたように、このところZoomで免疫学の講義のビデオを作成しているので、ラボのテクニカルスタッフや秘書さんに、京大での講義用に作成したビデオなどを視聴してもらっている。河本研では4月21日から交代勤務制をとっていて、私はA班で、二人の秘書さんのうちの一人宮武さんはB班だから、この10日くらい顔を合わせていない。その宮武さんが、「講義に出てくる細胞がかわいいので」とのことで細胞キャラを休日にフェルトを使って作ってくれた。免疫細胞キャラ達は最初に描いてから10年以上になるが、これまでに模型などにしたことがないので、このような3D化は初めて。とてもいい出来だ。ありがとうございます!

2020年4月28日(火)

リバーセル株式会社のHP
私は、2016年に坂口志文先生が創立されたレグセル株式会社というベンチャー会社に参画し、制御生T細胞(坂口先生担当)部門とキラーT細胞部門(河本担当)の開発研究を進めてきたが、増資や技術導出などをより効率よく行うため、2019年10月にキラーT細胞部門を分社化という形で分離し、リバーセル株式会社として独立した。円満な分社化で、今もレグセルとは何かと仲良くさせていただいている。社長は佐治博夫先生(HLA研究所の元理事長)。本欄でも昼食会の主宰者としてよく登場いただいている。
HPは少し前にできていたが、微修正を加えたりしていて、ようやく基本形ができたというところ。制作は大久保さんの会社、progress。細胞の顕微鏡写真などを素材として渡したら、「そういうイメージを使ったバイオベンチャーのHPはよくある。せっかくだから自分で描いたら?」と言われたので、久しぶりに抽象画を5点ほど作成した(HPの中の「カバーアートについて」で紹介)。マチエール素材をベースに用いたアクリル画で、色についてはスキャンして取り込んでからフォトショップで味付けした。コーポレートカラーとして使っている「クラインブルー」という色を強調している。
リバーセル株式会社HP:
会社名は、Rebirth (再生)+Cell(細胞)でRebirthel(リバーセル)。他家移植で使える汎用性即納型T細胞製剤を作る会社。がんの免疫細胞療法に使うが、将来的には免疫が関与する様々な病気に使えるようにしていきたい。自分達の開発した技術を臨床に届けるためには、このようなベンチャー会社が必須だ。昨年度採択されたAMEDの先端的バイオ創薬事業とも関わっている。
ロゴは、幹細胞の「自己複製と分化」を表現している。左側の灰色の二つの丸が灰色の円で繋がっている部分は「幹細胞の自己複製」を、右側の緑と青の丸へ繋がっている曲線は「幹細胞から前駆細胞を経てT細胞へ至る分化過程」をイメージ。

2020年4月27日(月)

Zoomによる講義
今春は、大学の講義は、どこもWeb講義になっている。本来は、Zoomなどを使って、リアルタイムで講義をして、質疑応答を受け付けたりするのが望ましいのであろうが、IT関係が苦手な私としては動画や音声のトラブルがあったら対処できないので、あらかじめ動画ファイルを作成して、それを配信してもらう方法をとらせていただいた。今月は、免疫学の講義が多く、京大医学部3回生90分x4コマ、藤田医科大学医学部2回生70分x6コマ、府立医科大学医学部3回生120分x1コマ、長浜バイオ大学2回生90分x1コマを担当した。写真は4月27日月曜日の午前中の藤田医科大学の講義の講義の2コマ目で、講義タイトルは「免疫細胞の分化」。Zoomでmeetingに参加として、ビデオをオンにして、録画を開始。写真のような画面でまず挨拶をする。
「画面の共有」という機能を使うと、パソコン上の画面が録画される。パワーポイントで講義。演者の顔が小さな枠で出るのがいい。また、カーソルの動きが記録されるのもありがたい。講義の中では私はこのようなマンガをよく使う。このスライドで説明していることは、胸腺の中でどうやってヘルパーT細胞とキラーT細胞に別れるか(クラスII分子を認識できる細胞がヘルパーに、クラスI分子を認識できる細胞がキラーになる仕組み)を解説している。結構難しい話であるが、細胞分化の面白さを感じてもらおうと、あえて教えている。
講義の中では、自作のイラストもよく登場する。これは10年くらい前に描いた胸腺内T細胞分化過程をちょっとレトロな工場で表したもの。上記の、「胸腺上皮細胞から長い時間シグナルを受けた細胞がヘルパーT細胞になる」という過程も描かれている。
画面を共有の中の「コンピュータの音声を共有」というタブをオンにすると、音楽もきれいに入る。この日は、Youtubeに載せているHappy Deepeeという曲を視聴していただいた。2016年に制作したNegative Selectionの1stアルバムに入っている。負の選択で死んで行く胸腺細胞の哀しみを切々と唄う曲で、ジャンルでいえばプログレッシブロックであろう。高浜洋介先生の作詞が素晴らしい。西山タカスケという作家の版画がプロジェクションで映写され、アーティスティックに仕上がりになっている。後飯塚先生による「胸腺細胞の死の舞い」も素晴らしい。
Happy Deepee:

2020年4月25日(土)

京都も緊急事態宣言
4月17日に、全国に緊急事態宣言が発令された。発令されてないエリアがあると、人がそちらに遊びに行ったりするから、結局全国ということになった。それに応じて、京大もレベル3という対応になった。よほど必要な実験以外はしない、新規の実験は開始しない、というレベルだ。2名以上での夜の外食は、家族であっても禁止という厳しい指示が出されている。また、ラボに感染者が出ると、濃厚接触者は2週間自宅待機となる。河本研も、4月21日火曜日から交代勤務制を開始した。
写真はカナートに買い物に行く途中の、高野川の風景。14時ごろ。平常時よりやや人が多いようだが、皆マスクをしているし、ほとんどが単独行動なので、問題なさそうだ。
カナートの地下のスーパー。人は多かったが、混雑しているというほどではなかった。

2020年4月12日(日)

深泥池(みどろがいけ)のミツガシワが激減
岩倉に買い物に行った帰りに、深泥池に立ち寄った。ミツガシワが激減していて、驚いた。8年前の写真と比べると、明らかだ(2012年4月14日の記事参照)。ミツガシワは北方系の植物で、この辺りでは深泥池だけでしか見られない貴重な植物だ。温暖化のせいなのかなと思って調べてみたら、どうやらシカによる食害らしい。そういえばこの数年、シカを洛北エリアで時々見かける。シカは悪くないのだろうが、増えすぎて生態系を乱すようなことになるのはいただけない。
岸から少し離れたところにかろうじて生き残って咲いている。
参考までに、上記の2012年4月14日の記事の中の写真をここに貼り付けておく。このように、当時は岸辺にびっしりと生えていた。

2020年4月11日(土)

コンビニの風景
4月7日に政府は緊急事態宣言を発令した。3月末から4月上旬にかけて感染者が急増したからだ。確かに、危機感が感じられる増え方だ。欧米からの流入によると考えられるが、3月中旬あたりに全国的に少し気が緩んだことも関係するだろう。東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都道府県だけで、京都は入っていないが、京都府は4月10日に「京都にも発令して」と政府に要請した。
随分前からマスクやトイレットペーパーはコンビニからは姿を消している。
一方、コンビニでもスーパーでも食料品の品揃えは問題ない。
少し前から、レジにはビニールシートが張られるようになっている。
         

2020年4月7日(火)

嘉島論文がpublishされた
この日、嘉島君のiScience論文がpublishされた。「T細胞レセプター遺伝子をiPS細胞に導入して、そのiPS細胞から再生したキラーT細胞が、ヒト腎臓がんを移植したモデルマウスで効果を発揮した」という内容。ヒトのがんをマウスに移植する場合、がんの細胞株が使われることが多いが、細胞株は本来のがん組織と性質が大きく異なることが多い。今回は、細胞株ではなく、患者のがん組織をそのまま免疫不全マウスに移植して継代されてきた、いわゆる患者腫瘍組織異種移植モデル(patient-derived xenograft model)を用いたところがポイント。このモデルではがん組織には元のがんの性質がよく保たれており、このモデルで効果があったということは、臨床応用にさらに一歩近づけたと考えている。
京大広報HPの記事:
写真は、4月2日に行った記者会見の様子。少し前の記事に書いたように、嘉島君は一度京都を離れたが、この記者会見のために1日だけ京都に舞い戻ってきた。なお、この日は政府の緊急事態宣言が出されてどの新聞もその関連ニュースで埋めつくされていたが、一部の新聞では取り上げられた。
嘉島君の実験をよく手伝ってくれていたテクニカルスタッフの白数さんが、記者会見を見にきてくれた。嘉島君と記念写真。いい写真だ。
時系列がちょっとおかしいが、この件は4月15日付けで京都大学のHPでも紹介されたので、この記事に追記しておく。
マウスのイラストが可愛らしい。広報の方、素晴らしいイラストを作成して頂き、ありがとうございました!
         

2020年4月3日(金)

教授室から見える桜とカエデ
今年も桜の花とカエデの新緑がきれいだ。
         

2020年3月31日(火)

趙先生と祝迫先生が来訪
肝胆膵移植外科の趙(チョウ)向東先生は、5年前から特定助教としてウイルス再生研の臓器新生プロジェクト(後に多階層プロジェクトに移行)に参加されていて(2015年4月20日の記事参照)、マウスを用いた肝臓移植モデルを用いてアロ反応、アロに対する寛容成立のメカニズムなどの研究をされてきた。今年度、肝胆膵移植外科に戻られることになり、祝迫先生と共に挨拶に来られた。ちょうど嘉島君の記事で5年前を振り返ったが、こうしてみると趙先生もほぼ同期している。なお、5年前は祝迫先生は京大病院の標的治療腫瘍学分野の特定講師だった。2017年4月から1年間はウイルス再生研の移植免疫研究グループの特定講師を務められ、2018年4月からは同志社大学生命科学部医生命システム学科の教授になられている(2018年3月31日の記事参照)。ここにも五年一昔の感がある。
         

2020年3月31日(火)

鴨川の桜
ラボの近くの鴨川の堤防に、毎年皆で花見に行っている(2019年4月5日の記事参照2018年3月29日の記事参照)が、今年は自粛。お昼頃、ちょっと様子を見に行ったところ、散歩している人は散見されたが、座り込んで花見をしている人はいなかった。

2020年3月30日(月)

ランの花
教授室の窓際においているジゴシニアというランが、今期も咲いた(2019年3月27日の記事参照)。
これはマキシラリエラというラン。このランも毎年、よく咲いている。地味なランだが、いかにもランという感じの草姿と花容で、気に入っている。また、花はバニラのような芳香がする。

2020年3月26日(木)

嘉島君、ついに京都最終日
嘉島君は昨年度で河本研での大学院生活を終わり、今年度の1年間は京大病院泌尿器科の助教として勤務していたが、この4月からは秋田大学の腎泌尿器科に戻ることになった。この1年は病棟の業務が忙しくてあまり河本研には来れてなかったが、それでも論文の仕上げ、投稿、追加実験などで出入りが続いていた。その論文も3月17日付けでiScience誌にアクセプトになった。秋田に帰るに際してぎりぎりで間に合ったという感じだ。この日、嘉島君は京都での最終日ということでラボに挨拶に来た。教授室で記念写真。
これは5年前に、嘉島君が河本研に参加した日の写真(2015年5月8日の記事参照)。嘉島君は初々しい感じだ。私はこの5年で顎髭が白くなっている。5年前の記事の前後の記事をみると、当時と今ではラボのメンバーのほとんどが入れ替わっている。よく十年一昔というが、五年一昔という感じだ。
増田さん、小林さんと記念写真。
テクニカルスタッフの方々と記念写真。嘉島君、お疲れ様でした!
 

2020年3月16日(月)

コロナウイルス禍への考察と雑感
 今年も、駐車場脇のハクモクレンが綺麗に咲いた。写真は3月11日に撮ったもの。例年より早いように思う(2015年3月22日の記事参照)。コブシとよく似ているが、コブシは花びらが6枚、ハクモクレンは9枚との事で、この花は9枚あるからハクモクレンだ。
 2月の下旬以後、コロナウイルス禍によって集会や移動が制限されている。 3月に無くなったイベントを、以下に列記してみる。7日藤田先生退官記念講演会、9日坂口先生文化勲章記念講演会、12-14日再生医療学会(横浜)、16日再生医療拠点報告会、17日-18日新学術非ゲノム複製国際シンポ、24-27日オーストラリアEradicate Cancer学会と関連集会。合計すると12日、移動日を含めると15日くらいがフリーになったことになる。
 本ラボニュース欄は、ラボの日常の記録というよりも、河本の活動記録欄のようになっているが、基本的には出張や会合の記録なので、3月になってから、このハクモクレンの記事くらいしか、書く事が無くなってしまった。
 そこでだが、コロナウイルス禍について、免疫学的な考察と、一般的な雑感を記しておく。雑感に関しては、私はウイルス学者でもないし、公衆衛生学者でもないので、門外漢の雑文とみなしていただきたい。

 まず、少し免疫学的考察を加えてみよう。普通の風邪を引く頻度は、若い人の方が明らかに多い(左図1枚目)。しかし、新型コロナウイルスは逆だ(左図2枚目)。なお、2009年の新型インフルエンザの時は高齢者だけでなく乳幼児や子供も重症化した(左図3枚目)が、今回のコロナウイルスではそういう現象がみられていない。どうしてだろうか。
 胸腺で作られるT細胞は、思春期をピークに、20年ごとに10分の1になるとされているので、一般には免疫力は齢と共に低下すると考えられている。しかし、実際には前記のように若者の方が風邪のウイルスにかかって発症する頻度が高い。若者の方があちこちに出歩くので感染しやすいという要素も少しはあろうが、子供が熱を出しやすいのは、そうして病原体を学んで学習しているからで、成人以後も同様に免疫のメカニズムで説明がつく。つまり、「普段遭遇する風邪ウイルスに対しては、老人の方が免疫記憶を蓄えているので強いから」と考えられる。物事を学ぶに際して若い人の方が記憶力はいいが、齢をとるにつれて積み重ねた総合能力で若者ではできない仕事ができるようになるのと、よく似ている。
 ではどうして今回の新型コロナウイルスに対してはそうならないのか。今回のように新規のウイルスの場合、記憶細胞があてにできないので、胸腺で作られたばかりの新鮮なT細胞の多い若者の方がウイルスに対抗できるという事かもしれない。この解釈は、わかりやすい。
 他にも、子供の方がコロナウイルスに頻繁に感染しているからその分コロナウイルスに対する免疫が強いという解釈もあるようだ。あるいは、高齢者の方が肺があれこれと障害を受けていて、ウイルスが定着しやすいという説明も見受けられる。これらも、基本的に「子供の免疫は強いから子供は発症しない」説だ。
 一方、逆の可能性も考えられる。つまり、今回の新コロナウイルスに対して作動できる免疫記憶を強く持っている人の方が、発熱や肺炎などの免疫反応を起こしやすい、という可能性だ。
 詳しい統計が出るまで確かな事はわからないが、新型コロナウイルスの感染は若い人や子供でも同じような頻度で起こるのに、発熱、咳などの通常の感冒様症状は高齢者の方が出やすいらしい。まずこういう感冒様症状について考えてみよう。
 一般に、ある病原体へ反応する免疫細胞は、他の病原体には反応できない。こういう性質を、特異性という。しかし、実は特異性はそれほど厳密ではない。病原体の持つ共通性に対して反応できるようになれば、その病原体の近縁種には反応できるようになる。さらに、ある病原体に対する免疫細胞が、別な病原体にたまたま反応できることもある。これは交叉反応性と呼ばれる。免疫記憶には、このような免疫反応も含まれている。つまり、数百種類という風邪のウイルスを全て免疫記憶しなくても、ある程度経験すると、近縁種間の共通性に対する反応や、交叉反応性で、カバーできるようになるということだ。
 コロナウイルスには何種類かあって、その多くはありふれた風邪ウイルスである。高齢者の方がコロナウイルスに対する免疫記憶をより強く持っているはずだ。あるいは、他の病原体に対する免疫記憶による交叉反応性も、強く持っているだろう。今回のウイルスに対しては、むしろそれが仇になっているのかもしれない。
 ウイルス自体は感染が成立してもほっておけばそれほど増えず、ごく軽い免疫反応くらいで除去できる程度なのかもしれない、ということだ。もしかすると、自然免疫系だけで対処できるのかもしれない。ウイルス陽性なのに症状が出ない、いわゆる不顕性感染のケースや、軽い症状ですむケースが若者に多いのは、これでも説明できる。一方、高齢者の場合は、免疫記憶で反応を起こせるケースが多いと予想される。そのために、感冒様症状が出やすいという可能性が考えられる。普段の風邪ウイルスの場合は、免疫記憶のおかげで発症もしなくて済むのに、今回のコロナウイルスでは、どうしてそうならないのだろか。何か特定の病原体に対する記憶細胞が、今回のウイルスに対して強い反応を起こしてしまいやすいのかもしれない。ポイントは、「なまじ免疫を持っているから、発症する可能性がある」という事だ。
 次に、重篤化についても考えてみよう。致死的な肺炎は、過剰な免疫反応によって起こることは、よく知られている。サイトカインストームなどとも表現される。これが高齢者に起こりやすいのはどうしてだろうか。
 同じ程度の過剰な免疫反応が起こった場合でも、持病を持っている人や肺機能が低下している高齢者の方が死に至りやすいという要素はあるので、高齢者で致死率が高いという現象には、そのような説明も可能であろう。また、高齢者の方が慢性的な炎症状態が背景にあるから重篤化しやすいという説明も可能だ。齢をとると組織の傷みや老廃物の沈着などが進み、それに対して自然免疫系が反応を起こして、いわゆる「自然炎症」という状態になりやすいのだ。他に、免疫を抑制する方向に働く制御性T細胞が、老化によって迅速な反応が起こせなくなるというメカニズムも考えられる。
 とはいえ、この重篤化に関しても、前記のように記憶細胞が関与している可能性もあろう。インフルエンザウイルスは高齢者だけでなく乳幼児にも重篤な肺炎をもたらす(左図3枚目)が、今回のコロナウイルスでそれが見られないのは、「新型コロナウイルスの場合は特定の反応性を示す記憶細胞集団があるかないかが鍵を握っているから」と、説明できるかもしれない。例えるなら、「公園で起こった子供の喧嘩に親が出てきて、機銃掃射で遊具ごと破壊する」という感じだろうか。

 新型コロナウイルス に対しては、もしここで論じたように「免疫記憶細胞が働きすぎる」のが悪いのだとすると、一般によく言われる「免疫力を強めて撃退」という考えは通用しないということになる。免疫は、とかく一筋縄ではいかないものである。

 なお、一般に免疫反応はHLAという白血球の血液型と深く相関している。今回のコロナウイルス感染の転機とHLA型との相関のデータが入手できるようになれば、病態の理解が深まる可能性があると考えられる。

 免疫学的な考察はこれくらいにして、以下に一般的な雑感を述べる。
 やがては全人類がこのウイルスに感染するのは、今更防げないであろう。
 何故それでも必死に防ごうとするかというと、それは急激な感染爆発によってもたらされる医療崩壊を防ぐ事、そしてワクチンや特効薬が開発されるまでの時間稼ぎのためだ。全人類の半分が感染したとして、今のままの1%の前後死亡率だとすると、3000万人以上が死亡することになる。しかし、ワクチンや特効薬が開発されれば、死亡者を大幅に減らせる事ができるだろう。その時が来るまでに、少しでも感染の拡大を抑えるべき、という状況だ。
 今欧州で起こっているような爆発的な感染拡大は、避けたいものだ。一方で、中国のように強権を発動すれば、感染はある程度制御できる事もわかっている。
 ここで、極端に考えてみよう。仮に全人類が、今から1ヶ月間家にこもったとする。勿論、最低限のライフラインを維持する役割の人達は休めないだろうが、それらの人は防護服を着て対応することにする。まずほとんどの業種が、実は不急である事がわかるであろう。また、多くの業種が在宅でもできる事も学ぶことになるであろう。そして、もしこういう事が実現出来たら、1ヶ月後にはウイルスは全世界で一旦ほぼ消えるだろう。ごく一部のキャリア化するケースを除き、ウイルスは、次に移る相手が無いと、消えるしかないからだ。
 何事にも優先権が存在するが、命より大事な優先事項はない。娯楽は、生命の維持に比べたら、明らかに優先度は下位だ。芸術や、歴史的に継承されてきた文化活動も、娯楽の一種だ。卒業式や入学式のような式典も、基本はセンチメンタリズムに立脚するものであり、優先度は低いとされても仕方がないであろう。経済活動でさえも、生死の問題に比べたら、優先順位は低い。
 今、世界中で、デマに踊らされて理性的な判断ができなくなっている人が沢山発生している。理性的である人の中にも、この危機の本質をわかっている人と、本質をよく理解できてない人との間で、鬩ぎあいが起こっている。下位の優先権を主張して、もし強行すれば、その分、死ななくて済むかもしれなかった人達を死に追いやるリスクを増やすになるという事を、理解すべきだと思う。
 ウイルス感染による被害と、集会や移動の制限による文化の途絶や経済の停滞を天秤にかけて考えるという事自体は正しく、当然そういうバランスが大事であろう。いつまで集会や移動の制限を続けるかは判断が難しいところであるが、制限を解除して感染爆発が起こってしまうと、取り返しがつかないのであるから、イランやイタリアのような医療崩壊に至ってしまった悲惨な例が現に存在する事を考えると、慎重な判断をしておく方が賢明であろうと思う。
 今回の厄災から、人類が学ぶべきことは多い。

 駐車場の脇に、ヤブツバキがまだ咲いていた。中辻憲夫先生が退官された時(2015年4月18日の記事参照)に記念植樹されたものだ。

2020年2月27日(木)

翻訳を監修した本「がん免疫療法の突破口」が近日刊行
がんに対して免疫療法が有効であるという確信に人類が至った経緯を綴った書籍が、近々(3月5日)、刊行される。免疫チェックポイント阻害剤の開発過程を軸にしたがん免疫療法の歴史書であるだけでなく、患者や患者の家族も登場し、臨場感がとてもスリリングだ。1年くらい前に監訳した「がん免疫療法の誕生 科学者25人の物語」も素晴らしかった(2018年11月28日の記事参照がん免疫療法の誕生Amazonサイト)が、この本もまた違った面白さがある、名著だ。なお、監修にあたっては、今回も渡邊先生と増田さんに手伝って頂き、大変お世話になった。
がん免疫療法の突破口:

2020年2月25日(火)

Wilfred来訪
旧友であるWilfred Germeraad(マーストリヒト大准教授)が、細胞療法に関連する学会で来日した折に、ラボに来てくれた。最近彼はCimaasというベンチャー会社を始め、樹状細胞やNK細胞を用いた自家細胞療法を開発しており、近々いよいよ臨床試験を始めるという。現況について話をしてもらった。
CimaasのHP:
セミナー後、会食。細胞療法に関わるスタッフを中心に、情報交換を行った。
26日火曜日の朝、Wilfredとdiscussionをしてから、有志と昼食。Wilfredは天下一品が好きなので(2014年2月10日の記事参照)、その路線上にあり、よりこってりしたスープを出すという「極鶏(ごっけい)」という一乗寺のラーメン屋さんに行った。
別なテーブルになってしまった永野君と長畑君も、大盛りを注文して、テンションが高そうだ。
私は、極鶏;鶏だく(並)に卵かけご飯をつけたセットを注文。スープは確かに粘性がとても高く、麺の中まで浸透してないので、混ぜながら食した。スープというよりソースという感じだ。とても美味しかった。

2020年2月22日(土)

坂口志文先生文化勲章受章祝賀会
この日、19時から大阪のリーガロイヤルホールで表記の会が開催された。会場の入り口付近に置いてあった勲章と書状。
関係者が多数参加し、盛会だった。免疫治療学会も、この会も、もし一週間後に企画されていたら、キャンセルせざるを得なかったというタイミングだ。
教子先生は、和服がよく似合っている。
式次第。豪華なラインアップだ。
岸本先生の挨拶。「坂口御夫妻は、社交的な奥様と控え目なご主人という組み合わせで、石坂公成先生御夫妻もそうでした」というような話をされていた。
山崎先生は、スライドを使って坂口先生の来歴や業績を紹介された。
制御性T細胞(Treg)論文の数。Foxp3が制御性T細胞特異的な転写因子であることを示した論文(2003年)以後、爆発的に増えていることがわかる。
坂口研の論文の被引用回数。すごい。
坂口先生による挨拶。
終了後、写真の三人(向かって右から斎藤先生、笹月先生)で話をしているうちに、飲み足しに行こうということになったが、あいにく行こうとしたバーが満席だったので、お酒にありつけなかった。笹月先生は、式の中の挨拶で、「奥様がご主人をよく制御されていて、そのおかげで今日のご主人がある。まさにNreg。」という、いい話をされていた。

2020年2月22日(土)

第17回免疫治療学会
コロナウイルス騒ぎの中、表記の会が、東大の伊藤記念ホールで決行された。前日に集会長である清野先生と清野ラボメンバーで、近くの中華料理屋で会食。美味しかった。
会場。写真ではわからないが、会場の半数以上の人がマスクをしていた。
清野先生による開会の挨拶。
会場に来られていた清野先生のお嬢様、はるなさんと。10年前の、清野先生の教授就任祝賀会の時(2010年4月3日の記事参照)以来だ。当時は、彼女は中学1年生になったばかりで、祝賀会でのバンド演奏でキーボードを弾いて頂いた。今は筑波大学医学部の4回生との事。

2020年2月18日(火)

日本セカンドライフ協会(JASS)での講義
JASS はサラリーマンOBの「生きがい」づくりを支援するために、多くの企業・団体の参加を得て発足した組織。十三会場で、3年くらい前から再生医療、がん、感染症など、テーマを変えて計5、6回講演させて頂いている。今回のテーマは「免疫力を維持しよう」で、講義の中で例によってバンド活動についても紹介した。さすがにネタ切れになってきたので、今回で一旦は最終とさせて頂いた。
世話役の川﨑泰弘さんと。川﨑さんは洛北高校の先輩で、その縁があってJASSで講演をさせて頂いた。

2020年2月16日(日)

京都マラソン
この時期の風物詩となった京都マラソン。コロナウイルス騒ぎはすでにあったが、予定通り開催された。研究室のすぐ近くがコースなので、応援に出かけた。写真は鴨川にかかる丸太町の橋から北を望んでいる。この日は小雨が時折ぱらつくような天気だった。山中先生は参戦し、自己ベストを更新されたらしい(3時間22分34秒との事)。

2020年2月15日(土)ー16日(日)

第3回日本免疫不全・自己炎症学会総会
表記の会が御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(写真のビルの2階)で開催された。
会場。私は初日に、昨年の教育講演(「よくわかる免疫学:獲得免疫編」、2019年2月2日の記事参照)に引き続いて「よくわかる免疫学:自然免疫編」という特別講演をさせて頂いた。
集会長である森尾友宏先生(東京医科歯科大小児科教授)の挨拶。今回まで3回連続で集会長をされたそうだ。お疲れ様でした。
この学会の理事長である平家俊男先生(兵庫県立尼崎総合医療センター院長、写真中央)の挨拶。この学会は日本免疫不全症研究会、自己炎症疾患研究会、食細胞機能異常症研究会の3研究会が協力して3年前に設立したらしい。これらの疾患の原因遺伝子は次々と見つかっているようで、学会の重要性は増すばかりである。
森尾研のスタッフの方達と記念写真。向かって左から葉姿汶さん(Yeh Tzuwen, 大学院生)、私、谷田けいさん(大学院生、小児科医)、岡村美湖さん(大学院生)。

2020年2月14日(金)

斎藤博英先生のセミナー
第7回個体の中の細胞社会学ワークショップが開催され、青木一成先生(大阪大学)と、斎藤博英先生(京大CiRA)が話された。写真は司会の小柳先生と斎藤先生。青木先生はヒトのCAR細胞についての話をされ、斎藤先生はRNAスイッチ(miRNAの発現のタイミングを利用した遺伝子制御の仕組み)の話をされた。RNAスイッチはいろいろと応用できそうな技術だと思った。

2020年2月14日(金)

バレンタインデー
バレンタインデーに、今年はラボの女性皆からまとめてとして、チョコレートではなく、ノンアルコールビールを頂いた。1月に受けた人間ドックのデータで中性脂肪値が要治療レベルであった事と、実験用に私が血液を提供しても乳糜血清なので遠心分離で単核球を分離するのが難くてほとんど役に立たないという事に対して、「いいかげん飲酒を控えろ」という心温まるメッセージがこもっており、あまりのありがたさに涙がちょちょぎれた。
         

2020年2月5日(水)

若尾先生来訪
若尾宏先生(独協医大教授)と杉本智恵先生(同講師)が、学会参加で関西方面に来られた折に夕刻に河本研に来られ、共同研究についての話し合いを行った。若尾先生は以前にiPS細胞からMAIT細胞という特殊なタイプのT細胞を再生することに成功されていて(Wakao et al, Cell Stem Cell,12:54, 2013)、現在は再生MAIT細胞を用いた細胞療法の開発研究をされている (2018年6月25日の記事参照)。この後会食に行き、引き続きdiscussionした。いい共同研究になりそうだ。
         

2020年2月3日(月)

吉田神社の節分祭
2年ぶりに研究室メンバーで吉田神社の節分祭へ(前回:2018年2月2日の記事参照)。
坂道の手前で、皆で記念写真。風情のある光景だ。
本宮を参拝後、坂道を登る途中、河道屋で年越しそば。美味しい。
吉田山の南側にある斎場所大元宮(さいじょうしょだいげんぐう)。日本中の八百万の神様が祀られており、ここを参拝すると日本中の神社を参拝したことになるという。
坂道の途中、富士千歳のにごり酒を飲みながら、お向かいの店の牛すじ煮込みと玉こんにゃくに舌つづみ。
坂を少し下り、鮎の塩焼きのお店で、とりあえずワンカップ大関の熱燗でほっこり。とても楽しい。
鮎の塩焼きと焼きそば。鮎の苦味と熱燗が絶妙。
最後は坂道の参道を降りたところの店で、ぜんざいで締めくくり。私は毎回ほぼ同じコースを辿っているが、常連客が行きつけの店でいつものメニューを頼むのと同じで、これはこれで楽しい。私と同じく毎年のように来ているという瀬和さんは、私とは随分違うコースを取っているようだが、今回はつきあって頂いた。
         

2020年1月31日(金)ー2月1日(土)

第24回造血器腫瘍研究会
表記の会が神戸研究情報センターで開催された。この会の懇親会でNegative Selectionが演奏することになり、前日の夜、三宮のスタジオで練習。以前に日本血液学会の国際シンポジウムで演奏した原子心母の前の方のパート(2018年7月27日の記事参照)を再演することになった。幸谷愛先生(東海大)には、主にベースのパートを担当する形で参加いただいた。今回、北村先生の強い要望で、原子心母の冒頭のブラスオーケストラによる現代音楽的なイントロを、大久保君と幸谷先生で演奏する事になり、写真は二人で悪戦苦闘をしているところ。ピンク・フロイドにはプロのカバーバンドが沢山存在するが、そういうプロでも再現しようとしない高難度なパートで、大久保君は最初は「これはさすがに無理」と言っていた。しかし、北村先生の熱意と、幸谷先生がそれに応えようとして一生懸命に弾こうとされるのを見て、大久保君も「何とかやってみよう」と、前回の練習(2019年11月18日の記事参照)から本腰を入れ始めた。今回は直前練習であるが、二人で何度もやっているうちに、かなりそれらしくなってきた。素晴らしい!
大久保君と幸谷先生の練習が終わった後、他の曲を練習し、その後近くのサイゼリヤで「さすがサイゼリヤ、めちゃ安い!」と喜びながら遅い夕食。左奥は本田浩章先生(東京女子医大)、右奥は横山明彦先生(国立がん研究センター)。
初日の研究会は午後から始まる。私と大久保君は夕方から会場の設営の手伝い。
会場はポートピアホテル30FのスカイグリルブッフェGOCOKU。景色が良い。明石海峡に沈む夕日が拝めた。
北側の窓からは神戸の街を一望できる。
神戸市の夜景。
懇親会。ブッフェ形式だが、全員着席で優雅な感じ。料理はとても美味しかった。
演奏会のプログラム。このチラシは北村研の大学院生の林優花さんが作成。好中球や赤血球が音符になっているのがfancyだ。
クラシック音楽の部。角家さん(プロ)のフルートを、本田先生が伴奏。素晴らしい演奏だった。
演奏終了後、お二人でプチ打ち上げ会。本田先生は「やっと飲める」と嬉しそうだった。
瀧内曜子先生によるバイオリン演奏。瀧内先生は京大医学部卒で北野病院勤務の血液内科医であるが、プロのバイオリニストでもある。瀧内先生とは前記の日本血液学会の国際シンポジウムの懇親会で原子心母の演奏でご一緒した他、最近ではNegative Selectionのセカンドアルバムの中の「夜光雲」という曲の中でバイオリンを弾いて頂いている(2019年5月11日の記事参照)。
伴奏は藤井夢音さん。流石にプロ同士の演奏で、緩急自在のパッセージが続き、圧倒された。
プロの演奏の後、Negative Selectionが登場。何だか申し訳ない気分だ。まず前記の「原子心母」を演奏。幸谷先生と大久保君によるイントロは、特訓の甲斐があって、バッチリだった。瀧内先生のバイオリンソロに続いて私がスライドギターでギターソロ。写真は2曲目の、北村先生作詞・河本作曲の「夜光雲」。本当は青木智子先生(近大消化器内科)に歌ってもらうはずだったが風邪でダウンされ、急遽北村研の大学院生の劉さんが歌ってくれることになった。
北村先生作詞・河本作曲の「Lazy Stemy」を横山先生に歌って頂いてから、最後は北林一生先生(国立がん研究センター造血器腫瘍研究分野分野長)がボーカルで「Hey Jude」。北林先生も風邪気味で全曲通しで歌うのはきついとの事で、横山先生がヘルプに入った。また、松井啓隆先生(熊本大学)が飛び入りでギターをへルプしてくれた。
出演者一同で記念写真。楽しかった。向かって右端が劉さん。
2日目、ランチョンセミナーで話をさせて頂いた。自己寛容の仕組み、がん免疫の話などの他に、バンド活動の紹介もした。
その中で使った、Negative Selectionセカンドアルバムの告知のスライド。即席で作ったのでレイアウトが雑だ。全6曲。自画自賛になるが、前回に増していい出来の曲が揃ったと思う。楽曲作りはほぼ終わったが、まだプロモーションビデオ作りの作業が残っているので、発表はもう少し先になる。
         

2020年1月23日(木)ー25日(土)

骨免疫学会ウインタースクールに参加
表記の会が軽井沢のホテルマロウドで開催された。このところ、この時期には表記の会に参加している。暖冬のためか、軽井沢でも雪ではなく小雨がぱらついていた。
夕刻からプログラムが始まり、その後ウエルカムパーティー。このホテルの料理は本格的なフレンチで、とても美味しい。今回は、いつもにまして特別講演の講師陣が充実していた。 特別講演講師:藤尾圭志先生(東大)、戸口田淳也先生(京大)、荒瀬尚先生(大阪大)、岡本一男先生(東大)、茂呂和世先生(大阪大)、高崎芳成先生(順天堂大)、石井優先生(大阪大)、吉川雅英先生(東大)、椛島健治先生(京大)。
2日目は、午前中は特別講演で、午後に少し自由時間がとってあり、有志で近くの軽井沢スキー場へ。浅間山がきれいに見えた。
浅間山をバックに記念写真。この集団は、主宰者の高柳先生や小林先生を始めとして、スキーが上手な人が多い。昨年は、荒瀬先生の滑りを映像で紹介した(2019年1月24日の記事参照)。今回初参加の椛島先生や茂呂先生も、軽快なステップで滑っておられた。そんな中、今年初参加の箭原(やはら)康人先生(富山大学整形外科)の滑りがやたらとすごかった。訊けば小学校の頃から競技スキーを始めていて、西医体や全国公立大学の大会ではスラロームなどで優勝したことがある強者だとの事で、納得した。なお、つい最近、Nature Cell Biologyに筆頭著者で破骨細胞の起源に関する論文を出されている(22:49-59, 2020)。 以下に、軽井沢スキー場の比較的緩やかなコブ斜面の滑りの映像を貼り付けておく。荒瀬先生の滑りはモーグル的だ。箭原先生の滑りは、ターンの切れがすごい。
私(河本):
荒瀬先生:
箭原先生:
15時ごろ、帰路につく。迎えのバスが来るまで、ラーメンとビール。至福の時だ。
夕方から夜まで、特別公演や若手の発表が続いた。写真は、自分の講演の中で、いつものようにNegative Selectionの紹介をしているところ。
講演の中で、Tarzanにイラストが載ったことも紹介した(2019年12月19日の記事参照)。そのイントロで、「Tarzanはこのようなマッチョ系の人が好んで読む雑誌」として、高柳研のスタッフの映像と共に紹介した(左は新田剛准教授、右は塚崎雅之研究員)。
食事の後、部屋でフリーディスカッション。手前は琉球大学医学部3回生の高森ゆうみさん、奥は東京大学医学部2回生の太田礼美さん(間違ってたらごめんなさい)、右はMatteo Guerrini君(理研Fagarasan研の研究員)。
Tarzan誌を何冊か持ってきていたので、何人かに進呈した。椛島先生には、敬愛するトレランの丹羽薫選手についての記事が載っている号だという事もあり、大変喜んでいただけて、ブログの中でも言及していただいた。
椛島先生のブログ:
3日目は、野沢に移動。雪がないことに驚いた。
午後からゴンドラを何本か滑り、遅めの昼食。楽しい。
夕方、サテライトイベントとして、最近の研究の進捗状況などの話をし、その後夕食。この宿(なぐも)は、料理がとても良い。
部屋で引き続きdiscussion。
最終日も、ゲレンデへ。この日はおおむね荒瀬先生とご一緒した。上手な人と一緒に滑ると、学ぶことができるのがいい。今回、自分の課題がいくつかはっきりしたので、今期中に何とかまた練習に来たいと思った。
スカイラインコース沿いの木には、ヤドリギが沢山寄生している。
柄沢(からさわ)の連絡リフト横の斜面。南向きだからとはいえ、ここまで雪が無いのは驚きだ。今年だけのことであって欲しい。
帰りは、私と荒瀬先生は野沢から飯山まで車で送ってもらい、飯山から金沢周りで新幹線とサンダーバードで帰った。途中で、千曲川の河川敷に、昨年の台風の爪痕がまだ見られた。このあたりの堤防は決壊はしなかったとの事だが、堤防の上の方まで水位が上がっていた事がうかがえる。
飯山までは、細沼雅弘先生(向かって左、昭和大学歯学部)に、とても速そうなベンツ(CLA45)で送って頂いた。

2020年1月22日(水)

リバーセル株式会社の定例役員会
2019年10月に、レグセル株式会社から分社化という形で、「リバーセル株式会社」が創立された。英語ではRebirthel Co.,Ltd.で、Rebirth(再生)とCell(細胞)を合わせた名前。iPS細胞から再生したT細胞を用いた細胞療法の事業化を目指している。佐治博夫先生(HLA研究所顧問)が代表取締役社長に就任され、私は取締役に就いている。写真はクリエーション・コア御車の3階に構えた事務所で、佐治先生(向かって左)と管理部の本村晋一さん。この日、定例役員会が開かれた。
         

2020年1月21日(火)

谷内先生来訪
理研IMSの谷内一郎先生が京都に来られ、河本研にも立ち寄られた。本年度採択された新学術領域「非ゲノム情報複製機構」では、谷内先生が計画研究の代表で、私はその分担にいれて頂いている(2019年9月22日の記事参照)。この日、共同研究について打ち合わせをした。

2020年1月20日(月)

防災訓練
この日、研究所で、火災を想定した避難訓練があった。こういう訓練は大切だ

2020年1月17日(金)

山口大学で講義
このところ、山口大学医学部保健学科で、主に検査学会の2回生・3回生を対象にした専門講義と、再生医療・細胞療法コースの大学院生を対象にした特別講義で話をさせて頂いている(2018年12月7日の記事参照2017年11月 24日の記事参照)。写真は特別講義。
再生医療・細胞療法コースの大学院生と記念写真。
講義の後、河野裕先生(基礎検査学講座教授)のフェアレディZ(写真)で宿泊するホテルに送って頂き、その後会食の会場へ。
関係者で会食。いいお酒が飲めた。この後、夜景の見えるバーで二次会。
向かって左から野島順三先生(検査技術科学専攻長)、常岡英弘先生(保健学科特任教授)、金重里沙先生(基礎検査学助教)。向かって右から湯尻俊昭先生(病態検査学教授)、私、山本美佐先生(病態検査学講師)、高見太郎先生(消化器内科学講師)、河野先生。

2020年1月16日(木)

ウイルス再生研新年会
ウイルス再生研はこのところ毎年研究所全体の新年会を開催している。今年は昨年に引き続きすぐ近所の教育文化センターで開催、司会は生田先生。
藤田先生が率いる楽団による演奏。モーツァルトの曲だったと思う。楽しそうだ。
藤田先生の挨拶。この3月で定年退官される。退官後はドイツのボン大学に行かれるらしい。
坂口先生の挨拶。今回の新年会は文化勲章受章の祝賀会も兼ねていた。ウイルス再生研としての正式な祝賀会は3月9日に芝蘭会館で開催される予定。
この1年の間に着任された教員による挨拶。話をしているのは伊藤貴浩先生。
会場。
事務関係の人による挨拶。話をしているのは神田俊明掛長。
服部さんの挨拶。南西地区に10年間おられ、両研究所にとっての激動の時代の歴史の語り部のような人だったが、昨年10月に本部の方に異動された(2019年9月25日の記事参照)。
向かって左から廣田先生、安井さん(伊藤研のテクニカルスタッフ)、増田さん、伊藤先生、私。伊藤先生、安井さん、増田さんはジョージア大関係者。

2020年1月16日(木)

ウイルス再生研交流セミナーで講演
今年に入ってから、毎週木曜日の9時30分から11時まで、研究所の教員が一人ずつ、研究内容を発表する会が始まった。研究所内での共同研究などを促進するための会で、研究所の若手教授の望月先生、伊藤先生、遊佐先生らが中心になって運営されている。まずは教授が発表することになっており、今回は第2回で、私の番。基礎研究、臨床応用を目指した研究、アウトリーチ活動などについて話をした。写真はNegative Selectionについて紹介しているところ。
オーガナイザーの先生方から頼まれて作成したポスター。Tarzanの記事で用いた新作イラスト(2019年12月19日の記事参照)を、出版社にことわりを入れた上で、転用させていただいた。なお、原則研究所員向けのclosedなセミナーなので、この記事を書いている時点より後の予定は削除してある。

2020年1月14日(火)

大阪大学心臓血管外科の方達とmeeting
大阪大学の心臓血管外科は、澤芳樹先生のリーダーシップの下に、iPS細胞から再生した心筋を用いた再生医療を進めてられている。細胞の材料としてはCiRAのiPSストック株を用いているが、HLAを合わさない移植が計画されている。一方で、移植免疫の研究もしっかりとされており、今回は増田さんが中心になってAMED再生イノベで進めている免疫不全マウスを用いた方法について、情報交換を行った。向かって右から伊藤絵望子先生(特任研究員)、中江昌郎先生(大学院生)、河村拓史先生(助教)、宮川繁先生(特任教授)、私、増田さん、小田紀子先生(特任助教)。
         

2020年1月13日(月曜日祝日)

京大病院第一内科同窓会
毎年この時期に第一内科同窓会が開催される。昨年度と一昨年度は入局者が少なくて寂しい感じだったが、今年は写真のように多くの人が入局者し、賑やかだった。ありがたい事だ。
高月先生の挨拶。89歳とのことであるが、矍鑠とされている。
上久保靖彦先生(人間健康科学系特定教授)と。相変わらず堂々とし体躯で、とてもお元気そうだ。
                   

2020年1月12日(日)

京都大学泌尿器の先生方と打ち合わせ
現在河本研には、嘉島君の仕事を引き継ぐような形で、京大泌尿器科から河野さん(後列向かって右)が大学院生(D1)として参加して、前立腺がんを標的にした研究を行っている。この日は、同泌尿器科の膀胱がん研究グループの小林恭先生(講師)と酒屋徹先生(大学院生)と、少し前から始めている共同研究について打ち合わせをした。

2020年1月9日(木)ー10日(金)

台湾の中国医薬大学を訪問
以前に少し紹介した(2019年10月18日の記事参照)ように、中国医薬大学(China Medical University)との共同研究の話が進んでいる。中国医薬大学は台中市にある私立の医科大学。台湾は今回で2回目、前回は台北市だった(2014年6月28日の記事参照)。どうでもいい事だが、今回気がついた事。台湾は沖縄のさらに南にあるわけだが、少し西の方に寄っており、台湾へ向かう飛行機(関西国際空港から台北の台湾桃園国際空港)は、かなり長い間日本の上空を飛ぶ。四国あたりからさっさと太平洋上に出ると思っていたので、ちょっと意外だった。
阿蘇山の噴煙が見られた。昨年の阿蘇シンポの時には雲と同じような白い噴煙だった(2019年7月26日の記事参照)が、現在は灰色の噴煙の色になっている。
九州から離れるところ。後に地図で確かめたら、いちき串木野市(左側海沿い)と薩摩川内市(右上)という町だった。
空港から迎えの車で台中市のホテルへ。ホテルの部屋からの景色。台中市は人口が280万人とのことなので、京都市(150万人)の倍、大阪市(270万人)や台北市(260万人)と同じくらい、ということになる。
大学とその関連施設は、市内の一画を占めるビル群、という感じ。写真は大学病院の建物の一つで、この中でセミナーをさせて頂いた。
モーニングセミナーとして、1時間ほど話をした。
セミナー後、関係者と記念写真。私の向かって左隣が、Chang-Hai Tsai先生(Chairman of the board)で、この大学の理事長にあたる。右隣りがKun-San Chao 先生(Professor Vice-President in CMU)、その隣がWoei-Cheang Shyu 先生(Professor, Deputy general manager in Ever Supreme)、右端がDana Lin先生(京大iACT)。左から3人目はShih-Ping Liu 先生(Associated professor in CMU)で、共同研究の担当者。Chang-Hai Tsai先生は台湾のアジア大学の創業者でもある。また、美術品の蒐集家でもあり、最近アジア大学のキャンパス内に安藤忠雄設計で自身のコレクションを陳列する美術館(アジア大学現代美術館)を建てたとの事だった。
アジア大学現代美術館:
セミナー後、大学とEver Supreme Biotechnology社の人達と打ち合わせ、施設見学、その後Ever Supreme関係者と昼食。Ever Supremeは中国医薬大学からスピンオフしたベンチャー会社で、大学と一体感がある。
昼食で供された「ツバメの巣詰め手羽先」。大変美味しかった。
反対側から見たところ。右側は骨が抜いてあり、中にツバメの巣が詰められている。ネットで調べると、これは広東料理の一つで、結構有名な料理のようだ。

2020年1月8日(水)

おやじの会新年会
江藤先生の呼びかけで何年か前に始まった「おやじの会」の、新年会。この会はゲストを呼ぶことが多いが、今回はオリジナルメンバーの3人で、まったりと放談。今回私はレグセルとリバーセルの分社化の経緯や現状についての話などをした。

2020年1月7日(火)

中野君とimmunitasをプレー
以前に少し紹介したように、東大の中野誠大(まさひろ)君と、古久保宙希(はるき)君が中心になって、免疫をテーマにしたボードゲーム「immunitas」を作った(2019年5月29日の記事参照)。 最近発売を始めたと聞いたので、1セット購入することにした。すると、中野君が、関西に来るついでがあるとの事で、この日、ラボまで来てくれた。
カードとボードを配置したところ。
カード。デザインが秀逸だ。
手札を置く台紙。慣れれば無くてもプレーできるが、最初は有った方がいい。
3人でも4人でもプレーできるとの事。ボードゲームが好きだという中宮さんも交えて、中野君に解説してもらいながらプレーをした。2回戦が佳境に入ったあたり。
2回戦が終わったところ。プレーヤーは共同してウイルスやバクテリアと戦いつつ、それぞれ活躍度に応じて点数を稼ぐという仕組み。2回戦ではウイルスもバクテリアも殲滅できた。自然免疫系のカードが手持ちで、樹状細胞を使うと獲得免疫系の細胞を召喚できるなど、免疫の仕組みを取り入れており、とてもよく考えられていて、面白かった。また、「炎症」や「造血幹細胞」など、特殊な役割りを持つカードが有ったりして、「ボードゲームの醍醐味がとてもよく出せていると思います(中宮)」との事だった。
免疫ボードゲームimmunitasのルール紹介:
ゲーム終了後、長畑君にも参加してもらい、会食。