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一般の方向け記事:免疫のしくみを学ぼう!

8.免疫細胞はどこで、どんな細胞からつくられるの?

免疫という働きは、沢山の細胞の共同作業によるものです。免疫に関わっている細胞の主なものは、顆粒球、マクロファージ、樹状細胞、リンパ球(T細胞とB細胞)などです。顆粒球、T細胞、B細胞は血液中を流れていて、まとめて白血球と呼ばれます。血液の中には酸素を運ぶ赤血球や、出血をとめる働きをする血小板なども流れています。免疫細胞は赤血球や血小板とは見た目も働きも全く違いますが、同じ血液細胞の仲間です。これらの血液細胞はすべてが同じ造血幹細胞からつくられます(図1)。

自然免疫の働き

幹細胞からいろいろな細胞ができてくるときに、初めのうちにつくられる細胞を「前駆細胞」といいます。また、細胞の性質が変わることを「分化」といいます。造血幹細胞は血液細胞全体からみるとほんの少ししかありません。幹細胞から成熟した免疫細胞が分化してつくられる途中で、細胞はすごく増殖します。
では、免疫細胞はどこでつくられるのでしょうか。造血幹細胞は胎児のときは肝臓に、生まれてからは骨髄にあります(図2)。

自然免疫の働き

顆粒球とB細胞は、赤血球や血小板と同じように、造血幹細胞のいる臓器でつくられます。つまり、胎児期は肝臓で、生まれてからは骨髄でつくられます。一方、T細胞だけは胎児期も、生まれてからも胸腺という臓器でつくられます。胸腺というのはT細胞をつくるためだけにあるといってよい臓器で、「腺」という名前がついていますが、ホルモンの分泌を行う臓器ではありません。胸腺は心臓の少し上にあって、ヒトの場合は子供の頃に一番大きくなり、思春期以後年齢とともに小さくなっていきます。
B細胞とT細胞はそれぞれ骨髄、胸腺で一応の成熟を遂げて、血液中へ出て行きます。ただし、このままの状態で免疫細胞として活躍するわけではありません。免疫反応を起こす現場で、さらに練り上げられ、磨き上げられ、役に立つ細胞へと分化していくのです。ここで免疫反応の現場というのはリンパ節や脾臓のことです。
リンパ球のできてくる道筋をひとつの図にまとめて見てみましょう(図3) 。

自然免疫の働き

骨髄で造血幹細胞から分化する過程でB細胞はそのまま骨髄でつくられますが、T 細胞になるべき前駆細胞は胸腺へ移行し、T細胞は胸腺でつくられます。別の場所でつくられたB細胞とT細胞ですが、それぞれ骨髄、胸腺を出てから、リンパ節や脾臓で出会って、協力し合って免疫反応を起こします。骨髄や胸腺のようにリンパ球が最初に分化するところを一次リンパ組織、免疫反応の場となるところを二次リンパ組織といいます。
どのような前駆細胞が胸腺に入ってくるのか、という問題は長い間謎でした。しかし、マウスを用いたわれわれの最近の研究で、胎児期には肝臓の中でT細胞だけをつくるような運命づけが起こって、そうしてT細胞だけをつくるようになった前駆細胞が胸腺にやってくることが明らかになっています。骨髄から胸腺にやってくる前駆細胞の性質については、多くの研究が成されていますが、まだはっきりとは分かっていません。