ラボ川柳のページ

 理研の横浜研では、毎年秋にラボ川柳のコンテストが催されている。以下は私が泉川寛というペンネームで応募した作品。毎年ひとつは入選しているが、あとは選外である。この2年は副所長賞を頂いているが、いまだに所長賞はとれていない。

  詠み人 泉川 寛

2004年度

富士山が 見えるとはしゃぐ いなかもの

安管の 書類にため息 秋の夜

頭脳流出のつもりが放出か

壁打ちの 速さで戻るや リジェクション 佳作

廃液を 集めてはやし 鶴見川

プロテクト かけおくほどの データなく

神にでも なったつもりか エディターは

花の宴 工場の月 鶴見川

泳動漕 使っていいか ええどうぞ

プラナリア よう研究して えらなりや

女子学生 マウスをさくさく サクリフィス

サボテンが 花をつけない さぼてんの

天然の エビだといいきる エビデンス

2005年度

三千里 たずねた母は ESセル

いい加減 目覚めなさいと ディレクター (女王の教室風)

学会で 演者の呼び出し プライド風

ネズミ1匹逃げて大山鳴動し

エアープランツ 親株子株で みずいらず

中庭の みずたまり今 ビオトープ

鳥渡る 空仰ぎ見る 検疫官

渡り鳥 昔風流 今はFlu  佳作

ヒトの顔 判別機能の 想定外

2006年度

嫁さんに メタボリ野郎と あだ名され

休日も マウスとつきあう 浦安で 副所長賞

日本沈没ならこの辺 すぐ沈む

サンプルが もれそうゲルが ローライズ

ラボノートと 思って書いてた デスノート

投稿の 前の強気は 亀田なみ

2007年度

理不尽な しごきにチームを 部屋と呼び (相撲部屋にかけて)

出ないなら 出るまで待とう フェノタイプ (KOマウスの表現型)

出ないなら 出させてみしょう フェノタイプ

出ないなら 殺してしまえ フェノタイプ

院生が コンタミ王子と あだ名され

気晴らしも ええじゃないかと 富士急へ

ミレニアム 強者どもが 夢の跡

このおとこ マナーモードに できないか 副所長賞

任期制 予算切れ目で 縁が切れ

留学生 見たことない菌 コンタミし (実話)

水を得た 魚のひしめく 養魚場 (理研のこと)

オタ院生 逃げちゃだめだと 独り言 (エヴァンゲリオンのファン) 

単身赴任 出かけに子らが またきてね

壮大な アイデアいつも 蜃気楼

抗体を 金持ちラボが おとな買い (貧乏ラボのひがみ)

走れども ねずみ車の から回り

牛乳を 注ぐおばさん 絵になるか (フェルメールの絵の話) 

月食や 世のかげ映して どす黒し

月と星 動き読めない エセ理系

温暖化 全球凍結 よりはまし

科研費の 申請小さい 秋見つけ (科研費の申請に秋を感じる)

ノネナール 同定怨む オヤジ連 (物質が同定されたために加齢臭が実体化して中年が被害者に)

2008年度

ゲノム染め 海月緑に 珊瑚赤 (海月(くらげ)緑=GFP、珊瑚赤=DSRed)

iPS きみの血となり 肉となる

全能の 細胞操る 俺は神?

満月で 月東なら 日は西に (子供の理科の問題を有名な句にかけて)

めんたいこ いくらかずのこ さかなのこ (ポニョ)

フロリゲン 飲んで一花 咲かせたい (フロリゲンは花成ホルモン)

国際より オールジャパンに 血が騒ぎ (iPS研究はオールジャパン体制とのこと)

飼育室 ゼノパス泳ぐ 水の音

飼育室 ヒト化マウスの 話し声(ヒト化マウスはヒトの血液細胞を移植したマウス)副所長賞

妻復職 夫雇止めで ひも理論 (ひも理論の研究者がほんものの「ひも」に)

センチュウは 人に感染 せんちゅうの 

そのたとえ 嬉しくないぞ 超新星 (超新星は星の最後の姿)

秋深し リーダー室が ごみ屋敷